7月発売予定のCD | サイケデリック漂流記

7月発売予定のCD

Hexagram 16
Russ Giguere
Hexagram 16

"Hexagram 16"はAssociationを脱退したRuss Giguereが1971年にWarnerからリリースした唯一のソロアルバム。Appletree TheatreのJohn Boylanとの共同プロデュースのもと、Loveを思わせるようなアシッドフォークナンバーに始まり、カントリー調のメロウチューン、アップテンポのロックンロール、黒っぽい女性バックボーカル入りのファンキーな曲、オーケストラ入りのプロコルハルムみたいなクラシカルなバラードまで、バラエティに富んだ内容になっています。

・・・というと、前回の記事の"The Association"のレビューと似ていますが、アルバムの印象はぜんぜん違います。それは、Associationを特徴づけていた男声コーラスがほとんど入っていないため。私は彼らのボーカルハーモニーからダウナー的トリップ感を享受していたので、個人的には本作の方がAssociationよりもサイケ度は低く感じます。

でも、RussのボーカルワークはAssociation時代以上に冴えているし、Chris Ethridge, Bernie Leadon, Bobby Womack, Spooner Oldham, Larry Knechtel, Jim Keltner, Russ Kunkel, Bud Shank, Jerry Yester, Judy Henske, ...といった錚々たるメンツがバックをつとめるタイトな演奏が素晴らしい。Fuzz, Acid & Flowersも「Associationより本作の方がずっと良い」と評しています。(私はやはりAssociation派ですが・・・。)

曲はRussのオリジナルと他作者のものが半々くらいで、Judee Sillのカバー"Ridge Rider"ではJudeeがギターとバックボーカルで参加しています。Appletree Theatreの"Brother Speed"(John Boylan作)をオリジナル以上の輪郭の鮮明さでカバーしているのも聴きもの。下の動画のラストナンバーはアルバムの中で一番「変態」な曲だけど、YouTubeにはこれしかなかったので・・・。(Real Gone Musicから7月2日発売予定。)



One Kiss Leads to Another
Hackamore Brick
One Kiss Leads to Another

Hackamore BrickはNYの4人組。"One Kiss Leads to Another"は1971年にKama Sutraからリリースされた唯一のアルバムです。

都会(Brooklyn)のバンドにしてはルーラルなムードがあり、Peter Rowanみたいなヘロヘロ系のボーカルの人がいて、演奏ともども、いい塩梅にユルいグルーヴを生み出しています。1曲、チープオルガン入りの60sサイケ然とした長尺曲("And I Wonder")がありますが、全体的にはサイケというよりヒッピーロックといった方がぴったり来るようなサウンド。グレイトフルデッドにも通じるようなジャムバンドっぽい雰囲気も感じます。

サイケ度は高くないですが、私はこのアルバム好きで、けっこうよく聴いています。(Real Gone Musicから7月2日発売予定。)



Crash Coffin
Crash Coffin
Crash Coffin

"Crash Coffin"はオハイオ州Clevelandのシンガーソングライターによる1974年の自主制作?アルバム(少し前にGear FabからCD再発されたOwen-Bと同じMus-I-Colというレーベルからのリリース)。以前、Radioactiveから下の動画の画像のような「ジャケなし」ジャケットのCDが出ていましたが、これは、オリジナルのジャケットは火事で消失してしまったという「伝説」があったため。でも、それは本人が広めたデマで、実際は(ジャケを制作するお金がなくて)今回のような手書き文字のみでのリリースだったんだそうです。

オープニングナンバーが、カズーが吹き荒れる脳天気なロックンロールチューンで不安になりますが、下の動画のようなダウナーヒッピーロックやファズギター入りサイケチューンも入っていて捨てがたいアルバム。でも、全曲オリジナルの楽曲は、コミカルなノベルティソングみたいな曲や、プレスリー風ロカビリーナンバーやジャグバンドチューンなどが脈絡なく飛び出してくる、なかなか一筋縄ではいかない作品となっています。(Gear Fabから7月16日発売予定。)



Complete Lhi Recordings
Honey Ltd.
Complete Lhi Recordings

ソフトロックのガイド本でお馴染みのHoney Ltd.は、デトロイト出身の4人組ガールグループ。本作は、Lee HazlewoodのLHIレーベルから1968年にリリースされたセルフタイトルの唯一のアルバムに、ノンアルバムシングルの2曲、および未発表の3曲を追加したコンピレーションとなっています(Light in the Atticから7月23日発売予定)。

なんといっても、シビれるようなトリップ感・浮遊感をそなえたボーカルハーモニーが素晴らしく、アルバム本編のうち"Louie Louie"以外は全曲メンバーのオリジナルといのも驚きでした。でも、LAでLee HazlewoodのプロデュースとWrecking Crewらのバッキングのもと録音されたオリジナル盤には謎が多く、モノラルミックスの全8曲20分強で少数リリースという、テストプレスのような扱いだったようです(そのためオリジナルLPは2000ドルくらいの値が付くこともあるらしい)。

ちなみに、Honey Ltd.からひとりが抜けてトリオとなったグループがEveで、少し前にKismetから唯一のアルバム"Take It & Smile"(1970)がCD再発されていました。



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