第56回 Ruthann Friedman
Ruthann Friedman
Constant Companion
"Windy"の話が出たので、その原作者であるルーサン・フリードマンを・・・。
「ウィンディ」の作者として彼女の名前を耳にしたことはあっても、この唯一のアルバム"Constant Companion"(1969)を聴いたことある人は、そんなに多くないのではないかと思います。私も2年ほど前にシスコのWaterレーベルからCD再発されて初めて聴いたのですが、「なんでこんな素晴らしい作品(しかもメジャーのRepriseからのリリース)が、ほとんど話題にならないまま埋もれてたんだろう?」とオドロキでした。
たしかに、本編は1曲をのぞいてアコギ一本のみの弾き語り。一見静かで、かなり地味な印象です。でも、その行間から広がる世界・イマジネーションの豊かさはこの手の作品の中でも有数のもので、聴いているうちに弾き語りであることを忘れてしまうほど・・・。いわゆる「襞々の中に宇宙が偏在する」たぐいの真正アシッドフォークアルバム! 「フィーメールヒッピーサイケフォーク」の最高峰に置けるような作品といえるでしょう。
彼女は「(つらい)現実から逃避するために歌を作り始めた」そうで、そのへんの、傷心や精神的ダメージを内に秘めながら、光ある彼方の世界を指向するような風情は、Judee Sillなんかを思い起こさせます。ちなみに、印象的なジャケットの絵は、JAのヨーマ・コーコネンの弟のPeter Kaukonenの手によるもの。演奏でも1曲、ジャズ風のエレキギターを弾いています。
Ruthann Friedmanは1944年ニューヨークの生まれ。のちに西海岸に移り、ホンモノのヒッピーとして放浪生活を送っています。サイケデリックムーブメント華やかなりし頃には、ヘイトアシュベリーでJefferson Airplaneのメンバーと生活を共にしたり、Country Joe & the FishとAvalonで一緒に歌ったり、Janis Joplinらとも交流があったそうです。
Associatonとは、友人だったVan Dyke Parksを通じて知り合い、一時グループと一緒に暮らしていたとか。ちなみに、"Windy"を書いたのはLAのDavid Crosbyの家に滞在していたときだそうです。そういえば、"Wooden Ships"とかを連想させるような曲があったりもします。
ところで、Associationによって全米1位の大ヒットを記録した"Windy"は、このアルバムには収められていません。これは、同じくWaterからリリースされた、1965~1971年のレア音源を集めたコンピの"A Hurried Life"で聴くことができます。このコンピには、Garden Clubというグループ名義でリリースされたシングルの "Little Girl Lost and Found"(1967)も収録されています。これはAssociationの "Along Comes Mary"を書いたTandyn Almerの曲で、とてもチャーミングなソフト(ポップ)サイケチューンとなっているのが聴き物です。
Ruthann Friedman
A Hurried Life