ロックンロール・サーカス | サイケデリック漂流記

ロックンロール・サーカス

昨日の記事にチラッと書いたタジ・マハールですが、その60年代の貴重な映像が収められている「ロックンロール・サーカス」のことを紹介しておきます。

これは68年末にローリング・ストーンズの主導で制作された音楽番組で、BBCで放映されるはずが、なぜかお蔵入りしてしまい、90年代後半にVHSやLDでリリースされるまでの約30年間、幻のフィルムとして語り草となっていたものです。そして、昨年末にようやく正規版のDVDが発売されました。

ストーンズのメンバーが選考したゲストアーティストたちのパフォーマンスが素晴らしく、特にこの番組のスペシャルバンドThe Dirty Macは、ギター&ボーカル:ジョン・レノン、リードギター:エリック・クラプトン、ベース:キース・リチャーズ、ドラム:ミッチ・ミッチェルという、今では正に夢のようなラインナップで、Yer Bluesの演奏はこの番組のハイライトとなっています。(クラプトンのギターがカッコイイ!) そのほかのゲストを出演順に挙げると、ジェスロ・タル、ザ・フー、タジ・マハール、マリアンヌ・フェイスフル、ヨーコ・オノ、といった面々。


ジェスロ・タルは、直前に脱退したギターのミック・エイブラハムの代役に、ブラックサバス結成前のトニー・アイオミが出演しているのが見所。「えっ?トニー・アイオミって上手いやんか」、というのは間違いで、ギターはミックのプレイの録音。トニーは当て振りだけです。ちなみに、当時の新人バンドでタルとともに出演候補に挙げられていて落とされたのがツェッペリンでした。その理由が、"Very Guitary"だったから、というのもハードロック前夜の当時を思うと面白いところです。


ザ・フーはモンタレー以降盛り上がっている頃で、ここでもパワー全開でミニ・ロックオペラを披露しています。その次に登場するタジ・マハールがこれまた最高~! 当時彼のバンドでギターを弾いていたのはジェシ・エド・デイビスで、この人も大好きなアーティストです(のちに発表するソロ作の「ウルル」は名作)。タジは黒人ブルースマンとはいっても、当時のアプローチとしてはロックそのもので、シンプルなバンド編成でのデビュー作などはロック好きならきっと気に入ると思います。


これらの強力なゲスト陣の後、最後にストーンズが登場して、Jumpin' Jack Flash~Parachute Woman~No Expectations~You Can't Always Get What You Want~Sympathy for the Devil~Salt of the Earthというメドレーを演奏するのですが、彼らの収録の時には時間が押して真夜中から明け方頃になっていて皆疲労していたこと、演奏曲目がわりと地味めだったこと、ブライアン・ジョーンズと他のメンバー間に溝が深まっていたこと(亡くなる半年前)、などの要因でメインのはずのストーンズのアクトが精彩を欠いてしまい、それがお蔵入りの原因になったのだといわれています。確かにセットリストはおとなしい感じもありますが、私が観た限りでは、「悪魔を憐れむ歌」に向けて徐々に盛り上がっていく感じで、ストーンズのパフォーマンスも決して悪くないと思います。

タイトル: ロックン・ロール・サーカス