★ノエルの動く城★ <29> | 時空を超えて SCOTT WALKER の世界へ

時空を超えて SCOTT WALKER の世界へ

スコット・ウォーカーの持つ不思議な魅力は、今も変わらない宝物です。
彼の音楽、生き方に心躍らせる毎日です。
そんなスコットの世界を私なりに描いてみたいです。

~最高に素敵なイリュージョン★~







生まれて初めて他者の魔法に掛かったノエルでした。




この優美な子守唄は、ノエルの心を安らかな海へと誘いました・・・。




エメラルダの妖艶な魔法は、完璧な愛の世界を創り上げて行きました。








それは最高に素敵なイリュージョン・・・★



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僕たちは魚になったみたいだ・・・




太陽の光が届かない 深海の底まで泳いでいって




暗黒の世界で たった二つの星になる





揺れながら輝き




お互いを探し出し





求め合い





一つの星になる・・・☆








僕たちは 海に生まれた星座のように輝いていた・・・☆




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あのワインには特別なエキスが入っていたに違いない



僕には分かっていた



だけど・・・



すべて承知で飲み干したのだ



この憂鬱な日々から解放してくれるなら




貴女が悪魔でも構わない





何処へでも連れて行ってくれ・・・





珠玉のエメラルダ・・・☆






        ☆
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小鳥達のさえずりが、深海の底からノエルを引き上げました。




ノエルの朝は爽快な・・・少し気だるい開放感で始まりました。





手が・・・。



隣に眠るエメラルダの姿を求めていました。




朝の挨拶をする為に・・・。







「エメラルダ・・・☆」






しかし、エメラルダの甘い唇に触れることは出来ませんでした。


シーツの温もりを確かめると、その冷たさに愛の余韻も覚めていくようでした。


ノエルはベッドから飛び起きると、シャツに腕を通して急いでコールタルを呼びました。




「お早う御座います。

ご機嫌麗しくお目覚めと存じます」




寝室の扉の前で、コールタルがうやうやしく何時もの朝の挨拶をしました。




「コールタル・・・。


僕は悪夢を見ていたのだろうか・・・?

確かに、僕には不似合いの贈り物だった。


エメラルダは何処に消えたのだ?」




ノエルは苛立った言い方で、老臣の心を読み取ろうとしていました。




「恐れながら申し上げます。

確かにノエル様は私どもの贈り物をお受け取りになられました。


ノエル様のお心に残されたもの、すべてが真実に御座います」




コールタルは顔を上げる事無く、ノエルの視界から逃れるように少し後ずさりをしました。




「偽りの愛に溺れたとでも言うのか・・・。


何故・・・?

エメラルダが此処に居ないのだ?!」




いつに無く興奮気味に、コールタルを威嚇しました。



ノエルはエメラルダの姿を見届けようと、全神経を青い瞳に集中させました。




「ノエル様・・・。

エメラルダ殿は去って行かれました。

最早、この地上にはおられません・・・」




ノエルはその言葉で、甘い残り香が、一斉に消えて行くのを感じました。




「僕に何の挨拶も無く帰ったと・・・?

別れの言葉一つ交わしていないのだ。

何故そのような理不尽な事が起るのだ!

仮にも僕は魔王の息子だ」





ノエルは本当に、珍しく苛立ちを露にしました。



そして、気が付かないうちに日々進化する、自分自身の置かれた不本意な「次期魔王」の立場を誇示していました。



コールタルはそんなノエルの様子を、白髪の間から丸眼鏡を光らせて、感嘆の思いで見ていました。



嬉しさを隠し切れずにホンの一瞬「ニタリ」と微笑むと、直ぐに冷静な態度を取り戻し、自分の茶色いマントの中から、大切そうに緑色に縁取られた銀の箱を取り出しました。




「エメラルダ殿からお預かりした物に御座います。」




ノエルは一目見て、開かずともその中身が何なのか察知しました。




「これは・・・!!」




「左様で御座います。

間違いなくミーシャ様に贈られた赤いマントと薔薇に御座います」




「何故これが此処に在るのだ?!

何故彼女が持っているのだ・・・。


その理由はエメラルダから聞く!!」




そう言うと、素早くコールタルの手から銀の箱を自分の手に移し変えました。




「コールタル!

地底への魔法陣を作れ・・・」




「はは~っ!!

かしこまりました・・・」




コールタルが颯爽と立ち上がり、ゾフィーの時と同じ様に、杖を床に突き立て、神秘的な宇宙の魔法陣を床に描き出しました。




広間全体が闇となり雷鳴が轟くと、エメラルド色の閃光がノエルを包み込みました。



それと同時に、ノエルは輝く青いマントを身にまとい、魔法陣の真ん中に跪きました。







エメラルダ殿が お待ちで御座います




魔王様・・・★








コールタルが深々と頭を下げて、長い白髪と髭を床に這わせてひれ伏しました・・・★





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