王冠の愛の物語(その38) | 時空を超えて SCOTT WALKER の世界へ

時空を超えて SCOTT WALKER の世界へ

スコット・ウォーカーの持つ不思議な魅力は、今も変わらない宝物です。
彼の音楽、生き方に心躍らせる毎日です。
そんなスコットの世界を私なりに描いてみたいです。

~悪夢~







生きる事に意味を見出せないまま、ベッドの上で虚ろな毎日が続く。



時々繰り返される哀しみと闘うのが日課のようなもの。







シューの心臓の音が一瞬大きく波打って、やがて、僕の腕の中で小さくなって消えて行く・・・。



お前を失う事はとっても辛いこと・・・。




僕達の熱い絆は永遠だったはず。




もう・・・二度と。




お前の温もりを感じながら、感情の赴くままに戯れる事も出来ないんだね。




最早・・・。




涙なんて何処にも存在し無いが、震える両手を沈めるのはこの小さな丸い塊だけ。





安らぎを与えてくれる唯一の友が、この白い毒だとは何て哀れなことだろう。





言葉に成らない大きな喪失感がきっとヤッテ来る!!





その日の為に準備を怠ってはならない・・・。









僕が公の場所に出なくなって一ヶ月が経つけど、マスコミは勝手な事を書き立てているらしい・・・。








精神不安性抑鬱症状からくるノイローゼ・・・。



何とでも言ってくれ。




もう生きる事に何の希望も感じない。




眠れない夜はこの毒を一飲みすれば良いのだ・。








虚ろな意識の中で、また微かに声が聞こえてくる



一つはピーターの声だ・・・

もう一つは医者だろうか?

いや 違うな!

誰だろう・・・?

聞き覚えの有る声だ。


「陛下。

忠臣からお詫び申し上げます」


「ナイト・・・。

良く遣ってくれた。

礼を言うのは私の方だ」


父上だ・・・。

僕の様子を見に来たんだな・・・。

こんな事が無い限り、僕に会いに来る事なんて有りはしない。


多くの国民から尊敬されて、公正な人格者として確固たる支持を受ける立派な国王だ。

そして常に、その隣には慈愛に満ちた王妃の微笑が在る。

理想的な夫婦の姿を見せつける。


僕には滑稽にも見える。

だが・・・もうどうでも良い事だ・・・。


僕は皇太子としては最悪の道を選んだ。



「スコット・・・。

遅くなってすまなかった」


温かな指が僕の顔を撫でた。

僕は信じられない気持ちで、薄っすらと目を明けようかと迷っていた。

もし夢なら覚めないで欲しいから・・・。


「ゆっくりと休みなさい。

本当に辛い思いをさせてしまったね。

私の大切な息子よ・・・」


嬉しくて嬉しくて高まる鼓動を抑えるのに必死になった。


「ナイト。

如何に時間が掛かろうとも、元の体に戻るまで静養させて欲しい。

皇太子の今後はすべて私が指示をする。

この意味が分かるな?」


「はい。承知しております。

これからも、陛下の意志をお守り致します」




二人の会話が途切れた・・・。



遠くの方から近づく一つの影がベッドに覆いかぶさった。



そして・・・。

冷たい手で僕の頭を撫でた。

ああ~・・・。

今僕が一番会いたくない者が僕の髪に触れている・・・。


「スコット。

これが私の反対を無視した報いなのよ。

可哀想そうな坊や」


そう言って僕の額にキスをした。

拒否したくても体が動かない・・・。


誰か・・・。

助けてくれ。

この悪夢から解放してくれ!!



恐ろしさで心が震える・・・。


ピーター!!

何処に居るんだ?



そして僕は遂に・・・。


震える指でまさぐって、手に触れたものをシッカリと握り締めると、キラリと光る鋭利な尖った物を彼女の背中に衝き立てた。


そしてそれは僕の胸を貫いて、真っ赤な血潮が交じり合いシーツに流れ出た。


大きな赤いシミが、真っ白なシーツを見る見るうち汚して行った。




堪らなくなって大声で叫んだ!






「夢なら覚めてくれ!!」







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