モンタギュー・テラスの青い影★~エピソード(10) | 時空を超えて SCOTT WALKER の世界へ

時空を超えて SCOTT WALKER の世界へ

スコット・ウォーカーの持つ不思議な魅力は、今も変わらない宝物です。
彼の音楽、生き方に心躍らせる毎日です。
そんなスコットの世界を私なりに描いてみたいです。

~I Don't Want To Hear It Anymore(もう聞きたくない)~











~償いは愛のはざ間で~



ジョナサンとの、友情を最優先させたスコットは、アトリエ製作を差し置いて、伯爵令嬢アンの肖像画を描く事になってしまいました。

急なジョナサンの依頼に戸惑いながらも、アイリーンの一件もあって、この「償い」を断る理由が見つかりませんでした。

幸い、マチルダの反応は以外なものでした。

「仕方ないわね。
私も彼には借りが有るし・・・。
そうね。三日だけ待つわ」

覚めた表情で、あっけらかんと言ってのけました。
スコットは、思わず握り締めていた拳を解いて、思わずホッとして彼女を抱き締めるところでした。

それ程までに、マチルダの言葉は、スコットの気持ち和らげ軽やかにしてくれたのです。

「貴方の元カノ・・・。
アイリーンって言ったかしら?
ジョナサンはジェラシーも含めて、あの絵が手元に残る事が許せなかったのよ。
彼女の新しい彼氏に売れば、全てが上手く行くわ。
こんな美味しい話は無いものね。

そして、今度は伯爵令嬢って訳ね。

いつまでも、彼に振り回されているのね・・・。
困った王子様・・・」

例によって、愉快そうに笑いながらも、射るように鋭い眼差しでスコットを包み込みました。




マチルダの意味深な言葉が、頭の中でくるくると駆け巡っては消えて行きました。

「今に、取り返しのつかない事が起きるわ。
償いも、これっきりにしないと・・・」




ロンドン郊外に在る、伯爵の居城の大広間で、レディ・アンは豪華なアンティークの椅子に腰掛け、スコットを見つめていました。
スコットは、時々マチルダの奔放な言葉に苛まされながらも、一瞬たりとも、筆を持つ手を止める事は有りませんでした。

幼さの残る可愛い顔で、ゆっくりとした上品な口調で、スコットに声を掛けました。
透き通る白い花柄のブラウスの下で、アンの豊かな胸が嬉しさで躍っていました。

「私の申し出を快く受けて頂いて、心から感謝しています」

しかし・・・。

描く事に集中していたスコットの耳には届きませんでした。

「・・・。」

アンは次の言葉を飲み込んでしまいました。
でも、その笑顔は、益々幸せそうに輝きました。



スコットの魔法の眼差しが、指先を伝わり、若いアンの魂を新鮮な勢いで描き出して行きました。






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三日目に・・・。

アンの肖像画が完成すると、スコットは急いで荷物をまとめていました。
迎えに来たジョナサンが、機嫌良くスコットの肩を叩きました。

「良くやってくれたね!
マチルダとの約束も守れたし、安心したよ。
そこで、あと一つお願いがあるんだ」

「お願い?」

「そう、あと一つだけ頼みを聞いてくれ。
レディ・アンとデートをして欲しいんだ」

「なぜ僕と?」

「王女様が、君の事を凄く気に入っているんだよ。
城内を少しだけ、ドライヴするだけで良いんだ」

そう言うと、自分の車のキーを無理やり手渡しました。

「君は僕を迎えに来たんだろう?」

スコットは、バッグを立派なソファーの上に放り投げました。

「怒るなよ。
これからも伯爵の城に出入りしたいだろう?」

「僕には、別にどうでも良い事さ。
君の達者な口で、お相手すれば良いだろう。
僕は帰る!」

荷物を抱えて足早に館内から出ると、玄関先に止めて有った、車のドアを勢いよく開けました。

「レディ・アン!」

助手席には、ハニカミながら微笑むアンの姿が有りました。

「ご迷惑ですね。
ごめんなさい」

アンは、長い髪をリボンで後ろに結び、帽子を被り、茶色のジャケットにお揃いのパンツを身に着けていました。

「ほんの少しだけでも、ご一緒にドライヴして頂ければ嬉しいのですが・・・」

アンの初初しい笑顔が、スコットの反抗心を和らげてしまいました。

「一時間くらいなら・・・」

スコットは、頭を搔きながら体を丸めて、運転席に腰掛ました。

「有難うございます。
急なお誘いを受けて頂いて」

スコットとは正反対に、満面の笑みを浮かべたアンを乗せて、車は勢い良く走り出しました。



そして・・。

ジョナサンの作戦通りに、二人を乗せた車は、城の奥深い緑の中に消えて行きました。






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丘を一つ越えた所で、スコットの頭の中に、「後悔」の二文字がハッキリと浮かんで来ました。

ハンドルを握る手に汗が滲み出て、スコットの心を揺さぶり始めました。




マチルダ・・・

僕は何をしているんだろう

一分でも 一秒でも早く

君の元へ帰りたいのに







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