すべて世の中にありとある事にふれて、
その趣き・心ばえをわきまえ知りて、
うれしかるべきことはうれしく、
おかしかるべきことはおかしく、
悲しかるべきことは悲しく、
恋しかるべきことは恋しく、
それぞれに情(こころ)の感(うご)くが、
物のあはれを知るなり。
それを何とも思わず、
情(こころ)の感(うご)かぬが、
物のあはれを知らぬなり。
されば物のあはれを知るを心ある人といい、
知らぬを心なき人というなり。
本居宣長著『石上私淑言(いそのかみのさざめごと)』から抜粋。
「物のあはれ」以外は現代語の仮名遣い(平仮名)で記した。
もう200年以上も前に死んでいる人なので、おそらく著作権侵害の訴訟を受けることはないと思われる。