ミヒャエル・ハネケ監督。2009年、カンヌ映画祭パルム・ドール受賞作品。
こういう映画を観ると多少落ち込むのです。観終わった、直後。自分の「観る目」のなさに。
パルム・ドールと言えばカンヌの最高位。
賞を獲るかどうかがその映画を測る唯一の物差しという訳ではないけれども、でも誰かしらは「とても優れている」と評価したということで、それに対して私は私の意思で「優れている」「いや、それほど優れてはいない」とはっきりと自らの立場を表明できずに「優れているのか優れていないのか分からない」と態度を一旦留保するのですから。
ただ後から、寝る前とかにジワジワ来るのですよ、こういうのは。
なんかズシーン!と重たい物を無理矢理背負わされたようで、「なんなんだ?この蟠りは」「あのシーンの意味するところはなんだ?」「なぜあいつはあんなことをした?」と、それはもう押し寄せる押し寄せる。
結果、とっても「心に残る」映画になるのです。なってしまうのです。
こんなことならあの時、観終わった直後、切って捨てちゃえばよかった。でもそうしていたらこのモヤモヤした快感にも巡り会えなかった訳で、この感情って間違いなく私には必要なものだから棄てなくて良かった。
で結局、この映画はいい映画ということになるのだけれども、私はそれに観終わった直後には気づけなかった。一晩かかった。寝かせた。
でもそれに気づけたヒトがいる。直後に解ったヒトがいる。
この差。この差を埋めたい。
だけどホントは私も解っていたのかもしれない。観終わった直後というよりも、観ている最中からもう気づいていたのかもしれない。
ではなぜ気づかないフリをしたのか?一晩寝かせたのか?
それを望んでいたからなのかもしれない。ゆっくりじっくり、味わいたかったからなのかもしれない。
そうか。そうだな。映画の観方なんて、観たヒトの数だけあって当然と言えば当然。正解なんてないよな。審査員やる訳でもないし。
審査員だって一晩寝かせているかもしれないし。
ということで、映画を観よう。どんどん観よう。自分なりの感じ方を感じよう。
映画が僕らを待っている。