前々回までお話ししてきたテディ・ペッターという人物とその作品については調べれば調べるほどますます興味が深まるといった感じで、きりがなくなってしまいます。それほど私にとっては彼の作品はユニークで大胆で調べる価値のあるのもばかりなのです。彼の作品の中で一見平凡そうに見えるのが上の画像のライサンダーです。直協機という性格上、無難な設計にならざるを得ないのかもしれませんが、よく見ていくとユニークなポイントが見つかるのです。
まずは主翼の平面形です。高翼配置の細長い主翼はもちろん直協機として必須の下方視界を確保するためでしょうが、このヒコーキの場合、コックピットの上の翼前縁を後退させて翼の幅のなかほどまでは前進角がついています。操縦者の上方視界に気を配ったのかもしれませんが、もしかしたら前進翼の空力効果を期待したのかもしれません。前進翼は翼単失速を起こしにくいらしく、低空を低速で飛ぶ直協機には適した翼でしょう。また、米国の直協機にみられるようなコックピットの上にかぶさる翼がないことはパイロットの心理にはプラスに働くことでしょう。人間は感情の生物なので意外とこういった心理面の影響はおおきいといわれます。また、昼間出撃での損害のおおきさゆえのちに夜間のと特殊任務に配置換えされた際にも上方視界がよいことは天測航法の助けになったことでしょう。
次にご覧いただきたいのが主脚です。写真が分かりづらくて申し訳ないのですが、ライサンダーの主脚は左右一体の「へ」の字型の角型材を使っています。みたところダンパーやスプリングなどの緩衝材は見当たらないので材料そのものの弾性で着陸時の衝撃を吸収させているのだろうと思います。
これを見て私は彼、テディののちの作品であるライトニングの主翼の桁を思い出しました。ライトニングの主翼の桁はセンターで分割されてはいますが胴体を貫いて馬蹄形になっています。これが優れているのかどうか私には功罪がわかりませんが、少なくとも彼の発想の大胆さはこのころからあったのだろうと思えるし、地味な直協機にもそれは発揮されていたんだろうと思います。
いい機会なので、彼の作品以外のヒコーキの主脚を調べてみたのですが、同じ英国機のグロスター・グラディエーターが似たような主脚でした。内部構造がわからないのでなんともいえませんが、少なくとも外見上は支柱も緩衝装置もない脚柱です。左右一体なのか、頑丈な支柱が内蔵されて空力的なカバーで整形しているのかもわかりません。今後の私の課題ですが、グラディエーターをそれほど好きでもないので多分積極的に調べるつもりはありません。しかしながら当時のRAFのヒコーキ技術は当局から技術指導などがなされていただろうし、意外な類似点を追っていくとまた発見につながるかもしれませんね。
ついでと言ってはなんですがいくつか主脚の取り付け方をご紹介します。まずは有名なフィゼラーFi156シュトルヒ。ライサンダーと似たような任務をこなしたヒコーキです。こちらは常識的に多数の支柱とおおきなダンパーを備えています。
戦間期のホーカー・ハインド軽爆です。機体のバルクヘッドに主脚を支持、補助支柱も胴体後部にしっかり固定されています。ダンパーも備えています。
WWIの戦闘機も基本は同様で機体側の強度のある縦通材から脚の支柱をとっています。上はブリストルF2B、下はSE5A。
こうしてみるとやはりライサンダー(とグラディエーター)は異質にみえます。英国人はたまに変わったことをするので、これも英国流ということなのでしょうか。ちなみにライサンダーは古代の武将の名前だそうです。なんだかピンとこないのも英国流でしょうか。







