元アイドルグループに在籍していた女性タレントの交際相手が金を貸した相手へ借金を踏み倒す為に暴力団の名前を出して脅して逮捕されたが、
地検は「起訴に足りる証拠がない」として処分保留で釈放した。
今後は不起訴処分となる見通しだという。
報道された内容ではとんでもない輩だという言葉以外見つからないが、
金を貸した相手との間で
【どのような返済方法を決めていたのか】
【一度も一銭も返済していないのか】
【暴利な金利をつけられた借金ではないのか】
【常識的な督促に対して、いきなりそのような態度をしたのか】
【自身および周辺の人間に何らかの支障が及ぶ可能性を感じるような督促をされていないか】
【そういう対応に対抗する為の発言ではなかったのか】
今までどのような対応をしていたかが不明なので一慨に不合理な結論とは言えない。
伝えられるこの男の素行や前歴を見るとあまり弁護するような人物ではなさそうだが、
個人間の金銭貸借という問題だけを捉えると、このような事情を加味するのは確かなのだ。
ただ、こういった案件は毎日山ほど検事の元へ届けられる。
詳細より概要だけで判断し、ある一定の処置・処理方法を基本として処分を終える事など日常茶飯事だ。
それほど大した事件ではなくても膨大な量の書類が作成される。
それなりの処理能力が無ければ、この世にある全ての事件に結論を下すのは不可能なのだ。
だから、客観的に見て有り得ない結果になる事が多々出てくる。
限りなく 【クロ】 であっても、証拠とされる資料・現時点での容疑者の状況などで不足・不十分とされたら
【処分保留】 【起訴猶予】 【不起訴処分】 という結論をする。
被害者なのに、
『それを裏付ける書類がないのが悪い』
『相手と会って話したとされる飲食店の領収書やカードの明細書はないのか』
など、こちらに手抜かりや油断があったみたいな言い方をされる事も多くある。
まるで被害者の粗探しをして起訴を避けたいようにしたいとしか思えない。
要は細かい(小さな)事件など殆どの検事は本気でやる気などないのだ。
書類を送検した警察も後から『あれもない、これも無い』と、
資料不足を検事から言われて不愉快になる事が多い。
それに応える為、警察は被害者に連絡し、確認し、再度・再三出頭してもらうように乞う。
被害者は警察に対して 「要領が悪い」 「無駄手間・二度手間ばかり取らされる」と、
不快にもなり、不信にもなりかねない悪循環となる。
挙句には 『被疑者が否認している』 で処分保留などするのだから、警察も噴飯モノだろう。
「取調べの可視化」 というものが注目されるようになり、以前に比べて今は非常に穏やかな取調べになった。
もちろん、警察の体面を重んじた決め付けの捜査・検挙・供述方法にも大きな問題がある。
しかし、『逮捕慣れ』した人間、『逮捕される事を覚悟して悪事を働いている人間』、『こういった人間が身近にいる人間』には、ある程度の強引で強気な姿勢で取調べを実行しなければ供述など引き出す事は無理だ。
実際、『今の警察は甘い』 『最近の取調べなんかチョろい』 なんて声をよく耳にする。
それに呼応するように、メディアで大きく取り上げられる事はないが、一般社会的にはかなり身近で巻き込まれたり、降り掛かる可能性の多い事件が不起訴・起訴猶予・処分保留という何とも甘い処理が量産されるようになった。
被疑者が拘留中の取調べで黙秘・否認を貫く事が多くなったのが一因だ。
それを貫く気力や体力を失わせるような取調べが多くの 『冤罪』 を生んだのだが、
反面、そのような取調べを為す事が困難になった結果、図太い被疑者にとって取調べは容易なものとなってしまった。
加えて、警察官に比べて、被疑者に接する時間が圧倒的に少ない検事は積み上げられた膨大な書類だけで結果の判断をするのだから、
検察の規模で考えるなら軽度であるかもしれないが、一般市民にとっては非常に身近で日常生活を脅かすような重大な事件がどんどん蔓延るようになって来始めているのだ。
被疑者が処分保留なり、不起訴なり、起訴猶予となって釈放されたら、被害届を出した被害者は相手からの逆恨み・嫌がらせ・報復に恐怖する事は間違いない。
そのような報復をして逮捕されても 「否認・黙秘すればチョロいもんだ」 と経験済みなのだから被害者へ何らかの対応を講じてくる事は想像に難しくないにも関わらず、その点を充分に考慮して処分を決定している検事がどれだけいるのだろうか?
頼りにならないのは検察だけではない。
検察と被害者の板挟みになりながら、厚顔無恥な被疑者に対しても強気になれない警察に対しても、
同情する一方で頼りにするタイミングを見誤ると全くアテにならない事が多々ある。
警察は「○○犯罪強化月間」というノルマ月間ではない時に、それに当て嵌まる事件の被害を訴えてもなかなか腰が上がらないし、取り組む姿勢を出さない。
警視庁では、暴力団排除条例が来月から施行される。
去年から暴力団絡みの被害を訴え出ている人が自分の周囲に数人いるのだが、
本格的な調書を取り始めたのは、いずれもこの9月に入ってからだ。
施行開始に合わせての効果を示したい目的以外の何物でもない。
職業柄、多種の犯罪担当刑事と僅かながら交流がある。
「月間」が近付くと、「ヤクザ絡みの案件はないか?」「詐欺だと思われる相談とかないか?」などと連絡が入る。
あからさまに 「今、月間じゃないから・・・」と以前は難色を示した案件に対して、「この前に言っていた件の話をしたいんだけど」とか言ってくる事も珍しい事ではない。
それが警察官個々の実績や査定など将来に関わるのだから。
警察官であっても一般会社員と同じ様に自己の成績、所属部署の成績を優先する事に変わりない。
だから、自分は事件の種類毎の強化月間を常に頭に入れている。
自分の相談者に対して、「そのような事件の場合、今は被害届を出してもすぐには動いて貰えない」とアドバイスする為だ。
がっかりする人もいるし、まさか?!と信用しない人もいるが、悲しいけど事実だ。
「今、殴られた」
「今、盗まれた」
「帰宅したら泥棒に入られていた」
といった、緊急性のある即時的な事件(所謂110番通報事例)ではないと、すぐには動いてくれない。
【何かあったら警察へ】というのは間違いではないと思うが、
それが解決・または納得・または安心・・・という事に即、繋がるかは期待しない方が肝要である。
やっとの事で悩みや不安をもたらす相手が検挙されたと安心しても、つかの間で思いもかけない結果を検察が出す場合もあるのだから。
事件の被害者より加害者の人権を尊重するといった、被害者および被害者周辺者の意識への配慮や気遣いを完全に欠落した論調を蔓延させた輩が、
「冤罪」を楯に全ての人間を「性善説」に則って取調べを甘くし、
「個人情報保護」という美名を持ち出して悪事を働いている証拠でさえ保護するようになってしまった。
今は携帯電話を所持している人が殆どだから、何か遭ったら録音、録画をするように心掛ける事だ。
自己防衛を常に考えていないと理不尽な結果になる事が多くなった、困った世の中なのだ。