おいらが子供の頃から両親というものは絶対に発言を

 

曲げない生き物で、どうしても意見が合わなければ

 

強行突破して無かったことにするしか手はなかった。

 

それは大人になってもしばらく続き、聞く耳を

 

持たなかった。そんなおいらの意見を唯一聞いて

 

くれたのが嫁さんであり、自分の意見は間違って

 

いないと確信を持てたのも嫁さんのおかげでもある。

 

それまでは親の発言に反すると世間的に間違っている

 

ことかもしれないと思ったが、そうでもないと自信を持てた。

 

そんな両親だが今も健在、だが聞く耳を持たないのは

 

変わらない。いや、聞こえなくなったのだ。

 

二人とも耳が遠くなってこちらからの話は紙に書いて

 

伝えるしか方法が無くなった。子供の頃から今まで本当の

 

細かい気持ちを伝えるにも伝わらないもどかしさがある。

 

だが、この二人はそういう人生なのだろうと諦めた。

 

だから嫁さんと子供とは自分の心がちゃんと伝わるまで

 

話をしてそれぞれの存在を尊重している。

 

おいらの代で聞く耳を持つという一番大事なことをすることで

 

次の世代に繋げていきたいと思っている。

 

そんなおいら家族だが、ジジババ共に孫にはかなりひいき目で

 

自分の気持ちより孫を優先してくれる。可愛くて仕方ないという

 

表現が適切だろう。まあ孫に愛情を注いでくれるならそれで

 

いいと思っている。

 

おいらと嫁さんが家を交代で守りながら趣味のコンサートを

 

他県に旅をしてまで行う事になったのがコロナが始まる前だ。

 

秋田県民会館が古くなって改装というか建て替えを行うため

 

5年ほど運用されなくなった。

 

そこで何としても聞きたいコンサートの為に東京、仙台、

 

大阪まで旅を計画するようになった。嫁さんには我が家の

 

重要な代わりの効かないお仕事があるので日帰りで帰ってきて

 

もらうスケジュールで旅を楽しんでもらっている。

 

おいらが京都へ行くことになったのは、嫁さんがその

 

コンサートを日帰りで決行することが出来ないことが判明し

 

代わりに行くことで納得してもらった。

 

去年の事である。飛行機でぱっと飛べばすぐ着くがその後の

 

アクセスが大変なので帰りがコンサート終了時間では間に合わない。

 

おいらは新幹線を乗り継いで最終に乗ったとしても秋田に辿り

 

着けない。そこで、千葉の母の実家の墓参りを入れる事で

 

納得してもらおうと1泊の計画を立てた。

 

今年は1月の段階では4月1日と5月26日の2つしか予定がなくて

 

嫁さんが4月1日に行き、おいらが5月26日、27日で墓参りも

 

計画に入れていた。ところが、6月3日に今年も京都であるとこが

 

発表されたのでおいらが6月3日、4日も旅をすることに決まった。

 

5月の墓参りは去年6月に急に亡くなった従兄の墓参りがあった為に

 

相手と約束したこともあり変更は不可能。

 

6月の京都は1泊ないとどうしても日程が取れないので1泊分は

 

去年より多くなってしまうがこれも仕方ない。

 

そう予定を立てていたのだが、4月1日の数日前に嫁さんが

 

ぎっくり腰になりおいらが代打になった。

 

今年3回も旅をすることになった。この予定をカレンダーで家族に

 

早くから伝えていたが親父が激怒し、予定のキャンセルを迫ったが

 

上記のやむにやれぬ事情を話して強行で納得させた。

 

計画は半年も前から旅費をいくらかでも安くするためにキャンセル

 

できないものになっているからだ。

 

おいらも3回もコンサートに行くのは心苦しいが、2回とも

 

変えられない計画だった。今回の3日の旅は、台風が迫っている。

 

これで強行も出来ないほど止められているのなら諦める。

 

だが、もし神様が来いと言ってくれるのなら上賀茂神社まで

 

詣でるつもりだ。新幹線が停まればそれまで。行っても雨で

 

中止だとしても京都までの旅費は戻らない。コンサート、もしくは

 

旅が止められるなら天の声として聴くつもりだ。

 

そう思っていたら親父殿がポツリと。

 

お金多めに持って行けよ。途中で戻れなくなってどっか泊まっても

 

いいし、無理に予定の日に帰れなくてもいいから。

 

と言ってくれた。

 

びっくりだ。今までの親父殿だったらこの天気だったら無理して

 

行かないほうが良いと必ず止められると思ったから。

 

この言葉一つで昔の聞く耳を持たなかった親父殿がやっと理解

 

してくれた気がしてうれしくなった。