完成度の高さを見せた新南米チャンピオン | Weltmeisterschaft

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先週のエクアドルの首都キトでの1stレグでは両者が得点を奪い合い1-1のドローに終わったコパ・リベルタドーレスの決勝は、現地時間7月27日水曜日に2ndレグを迎え、久しぶりに南米王者を争う頂上決戦がコロンビア三大都市の1つメデジンに帰ってきた。



ホームで迎え撃つアトレティコ・ナシオナルは1stレグで出場停止だったボランチのアレクサンデル・メヒアが復帰した一方で、1stレグで警告を受けたボランチのセバスティアン・ペレスが累積警告により出場停止で代役に、レイナルド・ルエダ監督は先のコパ・アメリカ・センテナリオ2016のベネズエラ代表にも選ばれていたアレハンドロ・ゲーラを起用してきた。



対するインデペンディエンテ・デル・バジェは、負傷により出場が危ぶまれていたストライカーのホセ・アングロもスタメン出場を果たし、ベストメンバーを揃えることに成功した。

試合は開始早々からホームチームが次々にチャンスを生み出す。まずは開始30秒も経たないうちに中盤でボールを奪ったゲーラが浮き球で一気に最終ラインの裏へパスを送るとU-23コロンビア代表FWミゲル・ボルハが抜け出してシュートを放つがこれは大きくバーの上に外してしまった。その直後の3分にも右SBの元コロンビア代表ダニエル・ボカネグラがミドルシュートを放つなど、立ち上がりからホームチームが圧倒的に攻め立てる。

すると8分にマクネリー・トーレスのフリーキックがポストに当たったこぼれ球からボルハがダイレクトで叩き込んでアトレティコ・ナシオナルが早々に先制点を奪った。

先制点を奪ったアトレティコ・ナシオナルだが、攻撃の手を緩めない。29分にはトーレスの強烈なミドルシュートが僅かに枠を外れるなど決定的なチャンスを次々に作り出す。

対するインデペンディエンテ・デル・バジェも35分ジュニオール・ソルノーサのスルーパスからホセ・アングロがシュートを放つがバーの上に外れた。

前半はこのままホームチームのリードで折り返すと後半に入ってもペースは相変わらずメデジンのチームが握った。53分には1stレグで先制ゴールを決めたオルランド・ベリオのシュート、62分にもゲーラのパスを受けたボルハのシュート、72分にもトーレスの浮き球のスルーパスをマルロス・モレノが抜け出して頭で合わせたがポストの外に外れた。

インデペンディエンテ・デル・バジェもメンバー交代などによって盛り返そうと試みるも、ボランチより後ろと前線の距離が開きすぎて間延びしてしまっていたためになかなか攻撃のチャンスを迎えることができない。

アトレティコ・ナシオナルは76分にもトーレスのパスからボルハがシュートを放つシーンを作り出したが決めきることはできなかった。しかしその後もボールをキープして終始試合を支配したアトレティコ・ナシオナルが危なげなく1点を守り切ってスコア以上の完勝で27年ぶり2回目の南米王者に輝いた。

アトレティコ・ナシオナルの勝因は劣勢時にはしっかりと耐えることができる安定した守備力と単調にならない攻撃の引き出しの多さのバランスがとれていたことだろう。

まず守備の面では、4枚の最終ラインをキャプテンのアレクシス・エンリケスが束ね、コロンビア代表経験のあるボカネグラとコロンビア代表のファリド・ディアスの両SBが落ち着いた守備を見せることで、それに呼応して若手のダヴィンソン・サンチェスも焦らずにしっかりと落ち着いて相手の攻撃に対処できている。そしてその前に防波堤として立ちはだかるのがダブルボランチのゲーラとメヒア(普段は主にペレスとメヒア)だ。この6人で形成される守備ブロックは非常に強固で、インデペンディエンテ・デル・バジェの若手アタッカートリオにほとんど何も仕事をさせなかった。そしてこの守備の堅さが、グループリーグ無失点と全体1位での突破につながった。

この決勝2ndレグではほとんどピンチらしいピンチがなかったが、相手にチャンスを作らせなかったこの守備の強固さは、クラブワールドカップで対戦する可能性のあるレアル・マドリーといえどもそう簡単に崩せるものではないだろう。ただし、最終ラインのレギュラーの1人、サンチェスはアヤックスへの移籍がほぼ決定しているなど、クラブワールドカップまでの間に多くの主力が引き抜かれる恐れがある。だが、サンチェスが引き抜かれた場合でも、リオデジャネイロオリンピックに挑むU-23コロンビア代表にも招集されたフェリペ・アギラールなどの代役候補がいるために大きな痛手にはならないことを願っている。

↑この中の何選手がヨーロッパのビッグクラブや中国、ブラジルのクラブに引き抜かれるのだろうか。↓

攻撃面ではまずは準決勝の直前の中断期間中に獲得したミゲル・アンヘル・ボルハの補強が当たったのは大きい。ボルハが準々決勝までの攻撃陣を支えたビクトル・イバルボがギリシャのパナシナイコスに移籍した穴をしっかりと埋めたことなくして今回の優勝はなかったように思える。リオ五輪でコロンビアと対戦する日本代表もこのボルハにはかなりの警戒心を持って対応する必要があるだろう。ボルハはバイヤー・レヴァークーゼンのメキシコ代表FW''チチャリート''ことハビエル・エルナンデスを彷彿とさせるストライカーで、最終ライン際での駆け引きとゴール前での天性のポジショニングセンスでゴールを奪う昔ながらの本格派ストライカーといったタイプの選手だ。 ボルハは準決勝のサンパウロ戦で2試合で全ゴールに当たる4ゴールを決めたのを始め、決勝でも2ndレグで決勝ゴールを奪い、大会通算で4試合で5ゴールと抜群の決定力を発揮した。

そしてウイングでの起用が多かったコパ・アメリカ・センテナリオのコロンビア代表にも選出された19歳のマルロス・モレノと25歳と脂の乗り切った時期を迎えたオルランド・ベリオの両アタッカーはそれぞれ大会を通して4ゴールずつを奪うなど、攻撃陣が決定機をしっかりモノにしたのは大きかった。

控えにも、24歳のドリブラー、アンドレス・イバルグエンといったジョーカーになり得るカードを豊富に揃えていたことも勝因だろう。 中盤の要セバスティアン・ペレスが出場停止だった決勝2ndレグもゲーラら代役の起用で乗り切ったし、とにかく今シーズンのアトレティコ・ナシオナルは誰が出場しても同じくらいの実力を発揮できる選手層が分厚いチームだったといえる。

問題はやはりここまでの活躍によって、主力として活躍した多くの選手が特にヨーロッパ方面から引く手あまたになっていることだろう。ここで引き抜かれる選手を最小限に抑えることが今後の躍進の鍵となりそうだ。

既に述べたとおり、サンチェスはアヤックス、マルロス・モレノもマンチェスター・シティへの移籍が濃厚との報道もあり、予断を許さない状況が続いている。ペレスにもスペインの名門バルセロナがスカウトを送ってきたなど、今夏のメルカートを賑わすタレントの宝庫でもあるアトレティコ・ナシオナルの今後からも目が離せない。

そしてこの完成度の高いチームを作り上げたレイナルド・ルエダ監督の手腕にも再び脚光が集まることだろう。元監督のファン・カルロス・オソリオ現メキシコ代表監督を始め、アトレティコ・ナシオナルのフロントは監督選びにも眼力を発揮している。このベテランの知将の下で12月に来日し、素晴らしいパフォーマンスを披露してくれることに今から期待したい。