短編:(理佐×梨加)
梨「あ〜やっぱり無理…」
理「ちゃんと、伝えてきなよ?」
梨「でも、絶対に振られる…」
理「そしたら、私が慰めてあげるから」
なんて言ったけど、本当は「私にしなよ」って言いたい。
今、私の目の前で、好きな人に想いを伝えるか悩んでいるあなたのことを、私は好きだってこと 伝えたいのに……。
「行ってくる。」
そう言って、私に抱きついてきた梨加。
パワーをもらうつもりでやったのであろうその行動は、ただ、私の心臓の鼓動を高鳴らせるだけだった。
理「はぁ…」
何度ため息をついたって、梨加が他の人を好きという事実は変わらない。
人の背中は押せるくせに、自分は好きな人に好きなんて伝えられない。
情けない……。
一人残された静かな教室に、時計の針の音と、校庭から聞こえる運動部の元気な声が入り混じる。
今頃、梨加は…。
どれぐらい経っただろう?
とても長く感じた。
だけど、時計を見れば、20分程しか経っていなかった。
梨「…ただいま。」
理「ん、おかえり。」
"どうだった?"
そう、聞く必要もないぐらい、梨加の目には涙が溜まっていて、下を俯向くと同時に、涙が溢れた。
理「おいで。」
両手を広げて、声をかけると、すぐに私の胸に顔を埋めて静かに泣き始めた。
私は、ゆっくりと梨加の頭を撫でる。
梨加が、そんなにも好きだったってことを感じて苦しいはずなのに、今は そんな苦しみよりも、梨加の近くに居られるこの関係に 甘えている。
私は、ズルイ人間だ…。
もしも、付き合っていたら?
梨加が笑顔で帰ってきていたら?
私は、素直に喜べただろうか。
分からない。
だけど、今、梨加が私を頼ってくれているこの現状に少しの喜びや安心感を感じてしまっている。
梨「理佐が居てくれてよかった…」
理「私はいつでも梨加の味方でいるよ?」
梨「うぅ…ありがとう…っ」
私の言葉を聞いて、また涙を流す。
梨加を思いきり抱きしめて 感じる温もりを、手放したくなくなった。
理「梨加、私にしておけば?」
梨「…えっ?」
驚いた表情で、私の目を見つめる。
理「ははっ、ちょっとは気紛れた?」
梨「もう理佐〜!ビックリしたぁ」
冗談っぽく誤魔化してみたけれど、それが逆に、苦しくもなった。
素直になれない自分が、情けなくて悔しい。
だけど、こうして梨加の傍に居られるならそれでもいいとさえも思った。
ズルい人間でごめんね。
梨加のことをよく分かっているからこそ、梨加は私から離れないことも分かっている。
いつか、いつか……
本当に私の気持ちを伝える時が来たとき、梨加はどんな顔をするのだろう。
--終--