中島みゆきのオールナイトニッポン
1984年2月7日 最後のハガキ~「怜子」よりテープ起し
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えーとー、お別れのハガキを読む時間になりました。
この方の、ぇー住所読まないで ペンネーム「生きるのって辛いね」
って書いてあります。
女の子からです。
ぇーと、みゆきさん、こんにちは。
私、世界で一番のブスです。誰が見たってブスです。
自分でも分かっています。分かってるんです・・・。
でも、他人から変な態度取られるとやっぱり傷つくんですよね。
周りの友達から毎日ブスって言われて、街歩いてても吐く真似されて
学級の男子からは睨まれて、おまけに生徒会長の人からは目の前で
いろんなこと言われて。
あー、目の前が霞んで見えない。字も書きにくい。でも頑張って書きます。
私、今年受験です。志望校に願書も出します。
だけど・・・、だけど、その高校には怖い人がいます。
中2の終わり頃、何度も何度も目の前に立って、吐く真似して、
みんなの笑い者にされました。
同じ高校に入ったら、また嫌なことされて毎日泣かないといけないのかと
思うと勉強できません。
死にたいなって思ったり、私が死んだら、あの人たち喜ぶだろうなとか考えます。
お母さん恨んだけど、恨んじゃいけませんよね・・・。
ここまで育ててくれたんだもの。
みゆきさん、こんな私でも生きてて良かったって思うこと、ありますよね?
堂々と人前歩けるようになれる日、来ますよね?
その日を夢見て頑張ります。
そして、そして、みゆきさんのコンサートの日には、
今の私でない私になってみようと思います。
って頂きました。
日本中で、この今の番組を聴いてる人、誰が一番醜く見えるか?
分かると思います。
このハガキをくれたあなた、そのくらいのこと分かる人が日本中に一杯いると
思います。
今、あなたの周りにいる学校の、そういうことを言う、あなたを傷つけた仲間だけが
人間だと思わないで欲しいと思います。
これからいろんな人に会っていくことと思います。
世の中、狭く見ないで下さいね。
女の子は金さえかければ、ある程度いくらでも美人になれると私は思います。
顔ってのは、いくらでも作れます。金さえかければ。
でも、金かけて綺麗になれない物もあると思います。
コンサートの日は、「あんたのままのあんた」で、おいでよね。
また来週・・・
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中島みゆきのオールナイトニツポンが終わったのが、1987年3月31日。
この1987年3月31日の最後のオールナイトニッポンで
最後の最後に彼女はこう言った。
幸せという字は、辛いと言う字の上の点を十にすると幸せになります。
人は、十分に辛い思いをして始めて幸せになれるんです。
と。
今、僕は思う。
彼女のこの番組を知らない、聴いたことがない世代は不幸だなって。