【感想】【考察】 Tails Noir(Backbone) | 遙か宇宙の彼方へ

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のんびりと更新していく予定です

 Tails Noir(テイルズ ノワール) の感想(レビュー)です

 かなりのネタバレを含む感想(レビュー)です

 見るときに注意してください

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


---------キ-------リ-------ト-------リ---------

 

【感想】

 

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 Tails Noir は元々 Backbone のタイトルで配信していて、後にタイトル名を変更しています

 上のSSは当初のものとなります

 

 ノワール調の探偵物ということでプレイしたけど進めば進む程あさっての方へ物語が進んでいき、そのまま当初想定したものとは違う形で終着してしまいました

 

 クリアした後大分考えました

 このゲームは何だったのかと言うことを

 

 

 解釈によって評価が分かれそうなゲームです

 チャプター1のような展開はチャプター1のみでしか見ることができないゲームです

 

 

 元のタイトルである Backbone は「背骨」という意味があるけれども「根幹」の方がこのゲームには合っています

「動物の世界」の根幹=システムとします

 

 とあるシステムが根幹を成した世界で、そのシステムを知った、もしくは知っている三匹の動物の物語です

 

 

 グラフィック・音楽について

 

 ドット絵によって表現されています

 グロいシーンがあるのでドット絵は助かりました

 

 

 新しいエリアに辿り着いたときにドーンとエリア名が表示されるのがお気に入りです

 よく見ると模様か絵かわからないけれど描かれています

 

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 イベントシーンでイラストのようでゆっくりと動いているグラフィックで表現されることがあります

 

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 ハワードと協力者がタクシーで語る場面のグラフィックが好きです

 毎回アングルが異なります

 

 このグラフィックを見ると、ハワードはドット絵とは違いスマートでどこか学者のように見えます

 

 雨が降っているときに画面に雨粒がつくときがあります

 この描写もよかったです。プレイの邪魔をしません

 

 

 音楽が鋭角な感じでシックなジャズです

 ストア説明文には『ドゥーム・ジャズ』と記載されています

 ダーク・ジャズが一般的な呼び方だったように思うけど自信がないです

 ちなみにノワール・ジャズとも呼ばれます

 このゲームにピッタリなジャンルです

 

 表向きはジャズバー バイツでの音楽は最高にいいです

 また、フローレンスの家で流れる歌が感情的に訴えかけてきます

 こっちはとある作業で必死になっているのに曲がよすぎて集中できませんでした

 

 

 スポティファイにサウンドトラックがあります

 

 

 《説明》

 

 アドベンチャーゲームです

 

 

≪操作≫

 

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 左スティック:歩く、オブジェクトの移動

 R2ボタン(長押し):走る

 

 L1ボタン:言語の切り替え → 設定 → 言語で第二言語を設定すると切り替えることができる。初期は言語切り替えが無効になっている

 

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 ✕ボタン:使う

 □ボタン:(アイテムを)手に入れる、屈む・立つ

 ◯ボタン:キャンセル

 

 タッチパネル:探偵メニュー

 

 オプションボタン:メインメニュー

 

 

≪基本≫


 1.マークについて

 

 (1) 足跡マーク:移動

 (2) 目マーク:調べる

 

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     a.同じポイントで数回調べることができる場合がある

 

 (3) 手マーク:アイテムを手に入れる

 

 2.会話は選択肢を選ぶことで進行する

 

 

 ゲーム内容について

 

 アライグマの私立探偵ハワード・ローターが主役です

 動物たちが住むディストピアのバンクーバーが舞台です

 

 

 探偵事務所 兼 自宅 を歩きながら、怪しいポイントを調べます

 

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 ポイント アンド クリック アドベンチャーゲームのようです

 

 ハワードの状況について軽く触れつつシステムについてのチュートリアルを兼ねています

 

 そして依頼者がやって来ると会話が始まります

 ユニークなのが選択肢の連続で会話が進むことです

 

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 他のゲームだったら選択したら返答と、ある程度の会話があって再び選択肢が出てくると思います

 

 会話専用のUIで右側に表示されます

 ログもすぐにチェックできるので便利です

 

 これが、このゲームのシステムとなっています

 シンプルでわかりやすいです

 

 

 チャプター形式で進み、全部で5つあります

 チャプター1がプロローグで、チャプター5がエピローグという普通ならチャプターとは独立していると思うけど、チャプターの一つとしています

 

 ゲームらしいのはチャプター1です

 たとえば、軽いステルス要素があります

 ほんとに軽くアクセント的にステルス要素が導入されています

 そのときはよくわかっていなくてゲームオーバーになったけど、わかると簡単です

 

 また、パズル要素もあります

 暗証番号を見つけるパズルで時間がかかるかと思います

 

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 チュートリアルはないけど、画面にある物を調べたり動かすことができます

 

 動かすことで気づいて解くことができました

 

 ステルス要素と暗証番号(パスワード)探しは他の場面でも出てきます

 

 しかし、これらはアクセントのようにあるだけでメインではありません

 このゲームの大半は会話の選択肢を選ぶことです

 選択肢の積み重ねによって進行していきます

 

 

 ストアの説明文を読んでプレイすると違う印象を受けると思います

 

 全体を通して大人向けの物語です

 第一章はノワール調の探偵物です

 しかし、依頼されたものをこなすゲームと思っていたら違っていました

 

 チャプター1のタイトルが『プロローグ』で、プロローグとは思えない程ヘビーな終わり方をしました

 チャプター2から始まる本章では、これがベースになると予想し、これ以上ヘビーになっても軽くなることはないだろうと予想しました

 

 チャプター1から思った以上に抉ってきました

 

 いっぱしの探偵には荷が重すぎます

 そのときの迷いがアライグマだけど人間らしいです

 

 各チャプターの最後はヘビーな終わり方をします

 悪い方向へ進むのに期待を裏切らないゲームです

 

 

 そんな運命に抗おうとちょっとした抵抗をしようとしたことがあります

 

 チャプター2での会話の選択肢の積み重ねの結果、自分が一番望まない方へいってしまいました

 そんな気持ちの自分にできることはお茶をいれることしかありませんでした

 

 相手の一番嫌いそうなお茶を煎れたら好きだったみたいで、この動物とは合わないなと思いました

 

 だから依頼も適当にしようと思っていました
 ただ、途中ノリノリで調査しちゃっていたけど

 

 

 【考察】

 

 考察するに当たり元々のタイトル Backbone をベースに考察しています

 

 

 ゲームストアの説明文から三つ引用(抜粋)します

 

『あなたは「何者か」ではない。あなたは「ヒーロー」ではないのだ』

『選択肢は存在しない』

『我らは変わるが、何も変えない』

 

 この文章がゲームについて理解する一助となります

 

 

 このゲームをクリアして思ったのが、主役はハワードではないということです

 ハワードは主役というよりも「真の世界」をプレイヤーに見せるための導き手だったということです

 

 だから何者かは重要ではないしヒーローでもありません

 

 また、会話において膨大な量の選択肢があるにも関わらず「真の世界」について変わることはありません

 たくさんの選択肢…会話における積み重ねで世界を変える力はありません。言葉だけでは世界を変えることができません

 

 ハワードはプロローグで自分では処理しきることができないことを知ってしまいます

 でも、自分なりにできることを求めもがくけどチャプターの最後で悲劇的な出来事が起こります

 そうして、この処理しきることができないことの大きさだけを知り幕を閉じます

 

 ハワード一人では荷が重すぎました

 残念だけど一人ではカチッとはまったシステムを変えることなどできません

 

 

 このゲームの主役はクラリッサとレニーだと思います

 とは言っても主役としての存在いうよりも「行動」が重要です

 

「真の世界」は動物の世界の頂点に立つ猿に支配された世界です

 彼らは肉食だから他の動物を食べています

 そのため肉食動物が優位な世界となっています

 草食動物は食べられる運命です

 

「真の世界」を変えようとしているのがクラリッサとレニーです

 アプローチの仕方が異なるけど目的は一緒です

 

 クラリッサは内側から壊そうとしています

 

 この世界のシステムを徐々に壊すために味方(裏切者)を作ろうとしました

 そのためには非合法な手段がピッタリなのかもしれません

 たとえば金でなびかせるとか

 

 金、酒、異性。溺れると人をダメにする三要素です

 そして究極的に非合法な薬物です

 クラリッサはすべて持っています

 

 レニーは外側から壊そうとしています

 ジャーナリストとして世間に事実を公表し民衆を煽って改革(革命の方がいいかも)を行わせようとしていました

 

「真の世界」の根幹(タイトルの『バックボーン』の意味)を変えようとしたクラリッサとレニーが主役なのです

 

 

 ハワードが現れる前は、それぞれの方法で対処しようとしているけれども処理しきることができなかったと思います

 

 クラリッサやレニーはハワードを利用します

 

 クラリッサは自分にとってメリットがあれば利用し、システム側の弱みを握れそうならハワードを実験動物にしてしまう

 レニーもハワードを利用して実態を把握しようとします

 選択肢によってはハワードに勇気を貰う可能性もあるが

 

 ハワードはプレイヤーに「真の世界」を見せるための導き手であると同時に、クラリッサとレニーに世界を変えるための動機を与える導き手でもあります

 

 最終的にクラリッサとレニーは手を結ぶかもしれません

 内側から壊そうとしているクラリッサと外側から壊そうとしているレニーが手を組んだらどうなるのか興味が尽きません

 

 

 このゲームで描いているのは旧タイトルである『バックボーン(根幹)』です

 具体的に何の根幹かと言えば「システム」です

 

 広義な言い方をすると『強固に構築された政治システム』であり、テーマは「この政治システムを変革するにはどうすればいいのか?」です

 しかもこの政治システムは腐敗しています

 

 このシステムの頂点が猿です

 

 世の中には富める者がいればそうでない者がいます

 現代では困窮している人に対してのセーフティーネットがあります

 

 しかし、この世界にはありません

 弱肉強食の世界で肉食動物が権力を握り草食動物は文字通り食糧となります

 

 草食動物が権力の座に就くことはありません

 あるのは最悪エサになるだけです

 そうならないように耐えて生きるしかありません

 

 固定化されたシステムの中で虐げられている動物はどうするのか?

「自由を求めて戦う」のか「受け入れる」のかの二択しかありません

 

 戦おうとしている動物が地ならしをしている最中がこのゲームの物語です

 ですから何も起こりません。嵐の前の静けさです

 

 

 狭義な言い方をすると『各々個人の思想・思考』です

 

 ハワードは最終的に外の世界へ逃れることができました

 しかし、人はシステム(広義な意味)の中でしか生きることができません

 

 ハワードに取り憑いた生物は決してハワードのために存在しているわけではありません

 寄生虫には寄生虫なりのシステム(根幹)があるからです

 

 ハワードのシステムと寄生虫のシステムとの共存はできません

 相容れないシステムは対立するしかありません

 ハワードは相手のシステムに敗れました

 

 広義な意味では猿が頂点の政治システム

 狭義な意味では各人の思想・思考 など のシステム

 クラリッサのシステム、レニーのシステム

 寄生虫のシステム

 

 そして、ハワードのシステム。それはプレイヤーが会話の積み重ねで決めていくことです

 プレイヤーがハワードのシステムを作り上げていきます

 

 しかし、プレイヤーがどんなにハワードのシステムを作り上げたとしても他の生物 のシステムとは共存することはできません

 

 腐敗したシステム(広義な意味でのバックボーン)と戦うのか受け入れるのか、他人のために生きるのか、それとも自分のために生きるのか、それを決めるのはプレイヤー(狭義な意味でのバックボーン)なのです

 

 

 食物連鎖を動物視点で見るとおぞましく感じてしまうのは物語の作り方がうまいからだと思います

 視点を変えることで常識が恐怖へと変わっています

 

 

 その他・まとめ

 

 ロード画面はタバコでドンドン吸っているのか灰になっていきます

 ロード画面のゲージ代わりです

 

 

 会話はプレイヤーが選ぶ形で進行するので、プレイヤーキャラクターが喋る内容を決めることが役割です

 パズル要素はおまけです

 

 

 このゲームの評価は人それぞれだと思います

 他のゲームと比べても評価が分かれると思います

 

 たとえば、購入動機が探偵ものをプレイしたいなら、あさっての方向へ行ってしまい購入した理由から外れてしまうので微妙な判断になるかと思います

 

 世界観や雰囲気を味わう目的や考察向きなゲームかと思います

 

 そう言った理由で人を選ぶかと思います

 

 

 私は探偵もの、チキンポリスが良ゲームで似たような雰囲気をもっていたから購入しました

 しかし、エピローグを見た後にしばらく考え込んでしまいました

 

 クリアして世界観に興味をもち、当初の目的とは違ったけど楽しむことができました

 

 

 お勧めです

 

 

【評価】

 

 ○:グラフィック、音楽
 ○:世界観

 ○:選択肢を選んで積み重ねていく会話
 ×:探偵ものではない
 ×:ゲームらしさが少ない → ステルス要素やパズル要素がおまけ程度にある