30年前
銀座線浅草から東武線の浅草駅に通じる
地下道に
なかむつまじい
ホームレスの夫婦が住んでいた
当時仕事で
栃木県独協医大へ行く途中
地下街でよくであった
地下街の階段に仲良く
座っていた
いつも不安であった
10年後
いや
20年後の自分かもしれない
そう思った
当時鹿島から東京に転勤
技術畑から営業畑
新しい環境のなか不安ばかりであった
そしてがむしゃらに働いた
大阪の先輩が私の飲みに誘ってくれた
パレスホテルの最上階のバーであった
窓の外
外堀通り
車の光の筋を見ていると
ほっとした
安堵感があった
なんだ
皆同じように
がむしゃらなんだ
東京は
ふとそう思った
銀座線浅草から東武線の浅草駅に通じる
地下道に
今夫婦のホームレスは消えった
いつの間にか不安でがむしゃらの
私も消えていた
30年後
今ここに
わたくしだけがいる
確かにいる