前にも書いたかもしれないが、妻の趣味のひとつに園芸があり、我が家は草だらけである。草といっては非礼なようで、ちゃんと観葉植物というらしい。
妻が倒れてから、お世話は私に役目となってしまった。入院当初、妻の意識がもどらないとき、妻の代わりとせっせと世話をした。妻の奇跡を祈るように水をやっていた。
もっともあまり水をやりすぎると根が腐るそうで、なかなか難しい。
3年お世話をした。冬、殆ど草である。ベランダに草があり、せっせと水をやっているというなんともばかばかしい。5月にその草が花を咲かせた。まるで、この時期のために生きているように。
可憐なピンク色の花である。いかにも妻がすきそうな花である。毎年咲かせるのだから、多年草であろう。
4月、新浦安はサクラでいっぱいである。妻と花見をしようと約束していたら、その週に具合が悪くなり、再入院。サクラからつつじ。新浦安の大通りは、艶やかなつつじの饗宴である。今5月の末。つつじは終わり、本格的な新緑である。我が家のベランダの花はまだ咲いている。
私はせっせと水をあげている。正直、厄介である。何かに責任を持つのは本当に厄介である。特に花はいけない。ことばをしゃべらないから、本当に十分なのか、足りないのかさっぱり分からない。水をまき終わって、いつも足りているのかなとか、今日は雨だから、大丈夫かと心配ばかりである。
このごろ妻が、私の妻に対する介護に対して文句を言うようになった。これはいい。
元気になっている 証拠だ。何も言わないと心配が募る。文句を言ってくれるのは本当に助かる。こっちはしろうとである。へたで当たり前。文句を言われると直そうと出来る。
特に今日は、起き上がるリハビリをしたいと大きな声で私に話しかけてきた。
ますますいい。
本当に家に帰ると滋子さんは元気になる。