桜前線が北上してきている。といっても関東は結構早い。今週末が満開ということである。
この時期、寒冷前線の通過のせいと思うのだけれど、2月ごろの陽気に戻る。身体が春の陽射しの暖かさに慣れているので、結構その寒さが身にしみる。
いまさら、冬のコートを着る気にならないので、なおさらである。
花冷え
日本の美しいことばの一つである。このころの寒さをこういう。
以前、京都に桜を楽しみに出かけた。4月3日頃だと思う。昼ぐらいに木屋町の宿に入り、哲学の路あたり散策しようと外にでると、雨が降ってきた。宿のおかみさんが、「やあ時雨てきはるわ。お風邪をひかんよう、おきをつけはって。」と、いいつつ送ってくれた。若王寺でタクシーを降りた頃、時雨も本格的になり、傘を雨と氷がまじった音が一段と激しくなってきた。
早々に、若王寺という喫茶店に入る。この喫茶店は、時代劇で有名なKさんが経営しているとのこと。アールデコ風の喫茶店であり、意外と落ち着く。
少し小ぶりになった頃、哲学の道の桜を見ながら、銀閣寺あたりまで歩く。寒さがこたえる京都の春である。帰りも同じ路を歩く。行きと帰りでは景観とたたずまいが異なり、違った道を歩いている気になる不思議な路である。哲学の路である。
帰りに松寿庵で、薄茶を楽しむのが常である。庵は裏千家の茶室で、哲学の道の小川を渡り、入り口を入り、脇を抜けると、結界があり、茶室がある。この茶室から見る庭は特にいい。特に雨の日は格別である。茶席が終わり、少し無作法だけれど、縁側で足を伸ばしながら、庭を見る。庭は熊野若王寺の山を背景に、落ち着いた風情である。
一言で端正である。
花冷えで縁側は肌寒いので長居は出来ないが、ひとしきり、新緑の緑に降りしきる雨音を楽しむ。

今日も、雨が降り、花冷えである。朝、窓のカーテンを開けながら、妻におはようと声を掛ける。すやすや寝ていて、答えはない。
窓にうつる新浦安の春は、ビルの中。
花冷えでなく、鼻冷えかも知れない。
浦安は桜樹が多い。今年は妻と花見をしよう。
週末は天気が良いといいのだけれど。
花冷えは妻にとって、つらい。