NHKの番組で、「男たちの旅路」という連続ドラマがありました。確か鶴田浩次、水谷豊、桃井かおりが出ていたと思うのですが、20年以上前の結構地味な番組でした。
その中に「シルバーシート」という題のドラマ。
内容は、老人ホームに住む6人ぐらいの老人が、市バスをカージャックし、バス会社が右往左往し、そのガードを引き受けている警備会社の主人公たちが、立てこもりを辞めるよう説得する話。
なぜ 老人がハイジャックを?その理由を言わない老人たち。突入し、強制的に退去させようとする警察。なるべく穏便にと考えるバス会社。その間に立って、何とか理由を聞き出して解決しようとする話。その主題がシルバーシート。
老人たちが立ちこもった理由は?
年をとり、老人ホームに追いやられ、自分たちの存在感が薄れていき、あなた方は老人だから、世間の世話になって生きているのだから、とだんだん社会の隅に追いやられていく。
その象徴としてシルバーシート。まだ元気に社会の役に立てるのに、老人だからと特別扱いをされていき、大事にされるのではなく、社会の隅に追いやられていくことへの反発。
ここ数年。あまり シルバーシートにこだわらず座っている。ふと周りを見ると、私が一番年寄りらしいと感じるときがあり、素直に座っている。隣に元気なねえちゃんが座り、お化粧直し。将来の抽象画のアーティスト。アクロバット的な手法を特異とした新進気鋭の現代を象徴とする画家といった具合。元気なあんちゃんは、両耳にヘッドフォン。これも将来のミュージシャン。本を読んだりしながら、ながら族を代表するミュージシャン。きっと彼の音楽を聴いているファンもながら族。講道館を埋め尽くし、本を片手に、ヘッドフォンで聞く、21世紀の音楽の世界。
いずれにしろ、若き次の世代はすでにシルバーシートの常連。
シルバーシートに座って、あまりそのことを気にしないのは、やはりまだ現役で仕事をしているからかも。
さすがに会社では、すでに老害の域。後輩の障壁になる気はなく、いまだに新規事業に入れ込んでいます。
LEDによる新しい照明、先端医療である陽子線治療センター、医療機器の物流と情報収集を組み入れた新しいビジネスモデル、などなど。先端を走る不安と労苦は結構ストレスだが、達成感には換えられず、いまだに現役である。
シルバーシートに座って、移動しながら、その先にあるものを夢見ている。その先にあるもの。