みんなのためのデザインから、一人ひとりのためのデザインへ。

 

偶然の出会いを大切に、隣の人の脳みそも借りて。

スケッチして、観察して、アイデアを伝え合う。

 

Suicaの改札機、美しい義足。

人間と新しい技術の関係を考えつづけてきたデザイナーが中高生に語る、

物づくりの根幹とこれから。

「才能とは無関係。誰もが身につけられる方法を話します」

 

・ささやかでも、誰かを確実にハッピーに

・まわりのものをよく見る(本当に見てる?)

・言語としてのスケッチは確実に上達する

・楕円が描ければ、人工物も、自然物もなんでも描ける!

・ものを作るために、作り方を発明する

・「誰も見たことがないもの」を描く

・アイデアが生まれる瞬間に触れる

・「うまくいかなさ」をいくつも発見する

・ウケなくてもくさっちゃダメ

・「ひとりのため」のデザインが未来を開く

 

人間がなにかを作ることの意味を、作りながら手で考える。

本書で、一緒に手を動かしながら、体感してみてください。

 

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一冊の本として授業全体を眺めてみると、あの時集まった中高校生たちは、一体なんの授業として受けとめたのだろうと、あらためて聞いてみたくなりました。物理や化学の授業のようであり、もちろん美術の時間もありますが、歴史的な話や企業の事例も少なくないので社会科の時間もあります。少なくとも彼らがここで学んだことが、大学入試の問題として提示される可能性はほとんどないでしょう。

でも実は、人間にとって普遍的なこと、誰もが少しばかり生きていくのが楽しくなる、そんな知恵のひとつを身につけてくれたはずだと私は思うのです。

 

授業はまず、身のまわりのものをよく見ることからはじめました。絵を描くことも観察の方法のひとつです。そして、今回、いちばん体感してほしかったことは、アイデアが生まれる瞬間に触れるということでした。実際に手を動かし、仲間と話し合いながら。既存のフレームに囚われず、好奇心のままに探索を進め、想像の羽を広げているうちに、ふとその瞬間は訪れました。

日常の些細な問題の発見からアイデアを得る。そこに新しい価値を見出し、形に落とし込み、人に伝え、一緒に完成させていく。この授業ではそういったデザイナーの営みの根幹を伝えようとしています。それは人間がなにかを生み出す時の普遍的な方法だと考えているからです。

(「はじめに」より)

 

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【目次】

 

はじめに

 

1章 デザインって、なに?

2章 言葉としてのスケッチ

3章 「っぽい」リアルさを描く

4章 分解と観察スケッチで「作り方」をたどる

5章 アイデアのヒントは観察の中に、他人の頭の中に

6章 使いやすいものを作る

7章 なにを、どうして作るのか

8章 形にして、共感を集めて、アイデアを育てる