内田は、研修所に入って寒気を感じたそうです。
疲れたのかな?
深く考えないで講習を始めました。
しかし、思わぬ壁に当たりました。
方言が分からないのです。四苦八苦しながら話を進めたそうです。
このエリアはリッター口銭がいいから考え方が甘かったと内田が言ってました。夜は、鹿児島支店長を初め、お偉いさんが来ました。真田君は本社行ったのか?話が違うな。
鹿児島支店長は不機嫌だったそうです。
私か内田をエリアマネージャーで引き抜こうとしていたらしいのですが、私が辞退したから内田しかいません。
内田は数字は出しますが、育成の評価は低いのです。内田は、酒豪では静岡県のエースです。
薩摩隼人、勝負しようよ。浜松は徳川家康の街だから関ヶ原の仇を取るか?
歴史を知らない内田だから言った台詞です。
さぞや皆さんの顔色が変わった事でしょう。
いつのまにか酔い潰れていた内田は、真夜中に目覚めました。
ふと周りを見ると、鎧兜を着けた武士の霊に囲まれていました。
幕府の犬め、くたばれ。
避けているうちに、隅に追い込まれました。
助けてくれ。
心の底から叫びました。
そして御守りを出しました。
不動明王様と佐伯さんが現れました。
不動の業火で焼き尽くしました。
佐伯さんがお経を唱えてくれました。
気がつけば、もう朝でした。
内田は飛行機で東京に来ました。
本社に来て、私に一部始終を話していたら、鹿児島支店長が来ました。
支店長は、昨日から本社にいました。
昨夜一緒にいた人間は全て幽霊でした。
あの研修所は、戦前は墓地でした。
それをだれかが更地にした場所に研修所を建てたそうです。
その研修所の取り壊しの話で鹿児島支店長が本社に来たのです。
内田は、顔面蒼白になりました。
幽霊を初めて見て、恐怖が後から来たのでしょう。
内田、鹿児島で徳川の話はするなよ。
私が理由を説明したら、納得していました。