私達は、二晩に分けて怪談を話す事にしました。
この研修に来ているメンバーは、それぞれが主任か副所長ですから話術が巧みですから、話にひきこまれます。
初日は、私と秋田から来た人が話をしました。
私は、数ある怪談の中でも一番怖い、真説リングを話しました。
貞子よりも遥かに怖い話をしました。
実は、あのリングには後日談があるのです。
みんなが恐怖に怯えて静かになった時に、丁度日付が変わりました。
真田副所長の怪談は怖いと本社でも有名ですよ。
私よりも、秋田の怪談は怖いかもしれない。
佐野はあの話をするのだら?
私は、短期間秋田に応援に行った事があり、佐野とは面識がありました。
では、始めますよ。
佐野が訥々とした口調で話を始めました。
私は、登山が好きなんです。自分のペースで、大地を踏み締めて歩いて、苦しい思いを味わって頂上で食べる、おにぎりの美味しさは格別です。
東北の山は、一通り制覇したので、アルプスに挑戦したいと思い、有名な山に登りました。
晩秋から初冬にかけての頃でした。
紅葉の時期が過ぎ去り、遠くに見える富士山も雪を少し被っていました。
途中から2人の男女と一緒になりました。
あまり顔色は良くなかったけど、仲の良いカップルでした。
途中で氷雨になりました。運良く、山小屋が近くにあったので三人で入りました。
私は焚き火を燃やして暖をとりましたが、2人は毛布にくるまって抱き合っていました。
私はいつのまにか寝ていました。
遠くで何かしら音がします。
それから揺れて来ました。地震でした。
震度4くらいの地震でした。
私は目を覚ましました。
さー逃げましょう、ここは危険です。
居るかと思った方角にはいません。
入り口に2人は立っていました。
私達と一緒に冥土へいきましょう。
焚き火に照らされた2人の顔に、肉は無くて骸骨になっていました。
私は下半身が金縛りにかかりました。
ポケットには、羽黒山で知り合った山伏にもらった魔除けの塩と御札がありました。
私は塩を少し舐めて、身を浄めてから、残りを投げて外へ逃げました。
そして、入り口に御札を貼り付けて封印しました。
急いでその場を去りました。
一分も立たないうちに、土石流が山小屋を直撃して谷底に流されましたが、火事になりました。
山岳警備隊がヘリコプターから消火しました。
焼け跡から2人の白骨死体が発見されました。
歯形から、二年前に行方不明になったカップルだと判明しました。
まさか、あんな者に遭遇するとは思いませんでした。