伊豆半島のお盆は、8月の頭3日の場所と、13日から15日までの場所と別れています。
私の住んでる伊豆市は、頭3日がお盆ですが、宗家のある場所は違います。
だから、毎年二回やる事になります。
墓参りの作法は厳格にやるのが仕来たりの一族ですから、掃除したりすると二時間はかかります。
朝6時に行かないと暑さで参ります。
ときたま、成仏していない浮遊霊や一族の霊が手招きします。
他の時ならまだしも、お盆の時は、ついで詣りは御法度です。
御先祖様を迎えに行く為の墓参りですから、寄り道したら罰が当たります。
さらに、お盆の時期の肝試しなど言語道断です。
この時期には、めったに出ない霊が出て来ます。
数年前に、余所者が8月の前半に狩野川でキャンプをしていました。
ちょうど、ナイナイがその近くで心霊現象のロケをやった場所があります。
昼間でも、私は近寄らない場所です。
それほど怖い場所なのです。
バブルが弾けた後の廃墟別荘が沢山ある地域があります。
そこに足を踏み入れたのです。
男女4人の2カップルでした。
自慢のドイツの高級車で入って行きました。
この辺りでやろうぜ。
廃墟肝試しに選んだ場所は、一家心中があった家でした。
しかも、猟奇殺人でしたから、あまりに酷くてベテラン刑事すら顔を背けたと噂された場所です。
入り口のチェーンを工具で切断して中に入りました。それから玄関のドアを蹴り破って中に入りました。
ウワッカビ臭いな。
清は文句を言いました。
本当にカビ臭いわね。
清の彼女の裕子と春夫の彼女の里英が言いました。
車を移動させていた春夫が来るのを待ってから中に入りました。
流石に不気味な場所だな。春夫は家に入るなり言いました。
なんか怖いね。
裕子がポツリと言いました。
それはそうでしょう、この家では8人が惨殺されているのですから。
玄関から奥に入って行きました。
大きな絵の飾ってある部屋に出ました。
ニャー
猫の鳴き声がしました。
キャー
女2人が絶叫しました。
この部屋では、4人惨殺されていました。
助けてよ
里英が悲鳴を上げました。里英の首筋に青い手が二本巻き付いていました。
里英大丈夫か?
春夫が助けようとしましたが、春夫の首筋にも青い手が伸びて来ました。
ギャー
ボキッ グシャ
里英の身体が見えない何かに引きちぎられました。
ウギャー
春夫の首が切られて清の前に落ちました。
清と裕子は急いで逃げようとしました。
玄関まで来たら、男性が立っていました。
誰の許しを得て、この家に入ったのだ?
右手には、鉈を持った白髪の老人が、赤い目で睨み付けて立っていました。
裕子、逃げろ。
清は老人に体当たりしました。
裕子は、その横を抜けて車の方に行きました。
しかし、車のエンジンがかかりません。
玄関の方から清の絶叫が聞こえて来ました。
裕子は車を諦めて走って逃げました。
少しはしると、広い道に出ました。
携帯で警察署に電話しましたが信じて貰えませんでした。
仕方無いから、歩いて交番に行きました。
一時間かけて説得しました。
一緒に現場に行ってくれる事になりました。
しかし、時間が過ぎて朝の5時になり、朝日が差し込む時間でした。
現場につくと、清が血塗れで腹を裂かれて死んでいました。
裕子は、車のエンジンをかけたら、エンジンがかかりました。
そのままで、家の中に入って奥の部屋に入った途端に、裕子は嘔吐してしまいました。
春夫と里英の死体を狸が食べていました。
内臓は全て出されていて、血の匂いが充満していました。
応援の警察官が来ましたが、裕子は逮捕されました。器物破損と不法侵入の共犯者としての逮捕でした。
車は警察官が運転して、裕子はパトカーに乗せられて警察署に連行されましたが、翌日釈放されました。
狸が人間の死体を食べる瞬間を見てから、狸が怖くなりました。
その裕子も、東京に戻って6日後にビルから落ちて死んでしまいました。
首筋には、青アザが残っていました。