私は、めったに踏み切りのあるルートは走りません。踏み切りで怖い物を見ているからです。
ある時、踏み切りで妊婦さんが立って列車の通過を待っていました。
そこへ車が突っ込んで妊婦さんを跳ねてしまいました。
車は止まりましたが、妊婦さんは電車に轢かれてしまいました。
私は車から降りて、女性の近くに行く途中で嘔吐してしまいました。
匂いに耐えれませんでした。
何体もの首吊りで、死臭には馴れていた私ですら、こんなですから、駆け寄った三人が三人とも同じようになりました。
携帯で、警察と消防に連絡をしてもらいました。
私が女性のところに行ったら、まだ息がありましたが、動かせる状態ではなかったです。
内臓が飛び散っていました。
悔しい、許せない。
最後に絶叫して、息耐えました。
跳ねたドライバーは、電車の運転士と怒鳴りあいをしていました。
警察も来て、消防もテレビ局も来て、大変な騒ぎでした。
夕方のローカル放送に、私が写ったと雪乃が言ってました。
その晩から、その踏み切りには、その妊婦の霊が現れると噂が立ちました。
跳ねたドライバーは、交通刑務所に送られる前夜急死したそうです。
心筋梗塞だったと聞きました。
ただ、本当に心筋梗塞かは疑問ですね。
ああいう死に方をしていれば、先ず成仏は出来ないから化けて出るでしょう。
子供も一緒に出たでしょうね。
8ヶ月でしたから。
飲酒運転で、尚且つ携帯電話をかけていました。
私は反対側にいましたから、一部始終を見ていましたが、暫くは雪乃を抱かなければ眠れませんでした。
この女性を成仏させるのは至難の業でしょうね。
幸福の絶頂期からの急死です。
未練と後悔と怨念がこもっています。
私は、それ以来その踏み切りは怖くて渡れません。
あれから十年以上たった今でもそうです。