夕食は、祖父の希望でステーキでした。
昌昭さんとの将棋は長期戦になりそうだからな。
有記、コーヒーの用意もしておいてくれよ。
祖父は私に言いました。
では、昌昭様、7時から対局しましょう。
そういうと、祖父は自分の部屋に戻りました。
昌昭さんは、父親と格闘技の話をしていました。
柔道と柔術の違いを昌昭さんは説明していました。
もし、飛び付き腕十字固めで、ギブアップしなかったらどうしましたか?
父親が聞くと昌昭さんは、バックドロップの原型の居反りをやるつもりでした。負けたくなかったし、有記さんは嫁にしたいですから。
母親は感心していました。昌昭さんはそんなに有記が好きなんですか?
だって、こんなに綺麗で清楚でおしとやかで、礼儀正しい女性は、めったにいません。
そう昌昭さんが答えると、父親は涙を流していました。
そこまで有記を思ってくれているんですか?
有記を箱入り娘に育て上げましたが、昌昭さんなら大切にしてくれるでしょう。不束な娘ですが、宜しくお願いいたします。
まさか、こういう展開になるとは私も思いませんでしたが、一番の難関の父親の了承を得たのは嬉しい事でした。
昌昭さんは時計を見て立ち上がりました。
さて、お祖父さんと勝負して来ます。
有記、案内してくれる?
昌昭さんは祖父の部屋に行きました。
お待たせしました。
昌昭さんはそう言って入りました。
祖父は自信満々でした。
昌昭様、私に勝ったら今夜は有記と一緒に寝ても構いませんよ。
そう挑発しました。
昌昭さんも、自信満々でしたから、では私が負けたら祖父の形見のこの銘刀、備前長船を差し上げましょう。
昌昭さんは、常に持ち歩いているバットケースから、刀を出しました。
それを祖父に渡しました。祖父は刀を抜きました。
これは、まさに連隊長閣下の持っていた銘刀ですね。手入れをしっかりなさってますな。
では勝負と参りましょう。和やかな雰囲気から張り詰めた雰囲気に変わりました。
私も将棋を指した事は有りますが、祖父には歯が立ちませんでした。
祖父の三枚矢倉と昌昭さんの美濃囲いで始まりました。
部屋の中は、物音一つしません。
駒の音がたまにするだけです。
見ている私も息苦しいくらいです。
二時間経ちました。
形勢は五分五分かな?
そう思っていたら、昌昭さんが不意に立ち上がりました。
有記、トイレに案内してくれ。
私は案内しました。
トイレから出て来た昌昭さんは、疲れているようでした。
昌昭さん、勝てそう?
私が聞くと、次の一手で決まるよ。
だから、有記の力を頂戴。そう言って、キスをしてバストを軽く揉みました。
元気が出たよ。
ほら、触ってごらん。
股間が硬くなっていました。
こんな状態で冗談言える人なんだと、改めて感心しました。
席に戻った昌昭さんが打った一手で祖父は考え込んでしまいました。
嵌め手を打たれたのです。三枚矢倉を崩されている祖父は苦しい展開でした。
飛車をたたでくれに来た一手ですが、まだ昌昭さんには持ち駒に、飛車がいます。
結局、四時間の闘いの末に昌昭さんが勝ちました。
私の部屋で一緒にベッドに入りましたが、夜はキス以上はしませんでした。
神経が疲れきった。
そう言ってました。
目の下に隈が出来ている昌昭さん。
私を貰う為にこんなになってしまうなんて。
より一層愛しくなりました。

この試練は本当にキツかったです。
格闘技はどうにかなると思っていました。
柔道は、四段相手に練習した事がありますから対応できますが、将棋は回数やらないとパターンが読めません。
有記から、お祖父さんは強いと聞いていたから、変化しやすい美濃囲いから振り飛車をやりました。
四時間の闘いで、お祖父さんは集中力が切れて、ミスをしたから、私が勝ちました。
嵌め手を数回指したけど、そうしなければ負けたでしょう。
それにしても、疲れた1日でした。