この夏最後の怪談は、聞いた話ではなく、体験した話で締めくくって終わります。
まだ、私が20代の頃の話です。
雪乃がまだ看護実習生でした。
私も、過労から喘息が再発したので、有休を二週間取って、短期入院しました。雪乃は、実習が終わると洗濯物を交換に来てくれました。
ある日、雪乃が浮かない顔して来ました。
仲の良い患者が急死したと言うのです。
しかも3日続けて。
しかも、患者が急死する前に、不思議な男性を見ていました。
雪乃、元気を出すんだよ。カーテンを引いて抱きしめてキスをしました。
キスの味がおかしい。
胃が弱っているな。
病棟から、看護学生寮はそんなに離れていないから歩いて送りに行きました。
その時、雪乃が嫌な者を見た。
呟くように言いました。
向こうから貧相な顔した初老の男性が歩いて来ました。
一応会釈してすれ違いました。
雪乃を送って病棟に帰る途中、また先程の老人に会いました。
生気の無い、まるで幽霊かと思いました。
無言ですれ違いましたが、もしかしたら、死神か?
私は、病院の受付に行って入院患者の写真一覧を見ました。
やはり、写真がありませんでした。
多分、死神か悪霊だろうと私は、推測しました。
私は、ベッドの四隅に、御札と盛り塩をしておきました。
深夜2時頃、異様な気配で目を覚ましました。
個室に張り詰めた空気が流れました。
貴様、やはりただ者ではなかったな。
悪霊が現れました。
これ程の結界を張れる奴とは思わなかった。
もう、死にかけた奴の命はもらった。
貴様の命をとるつもりだったが、返り討ちに合いそうだな。
さらばだ、しかし次に合う時は、命を貰うぞ。
それ以来、私は死神には会っていません。
死神は、どこにいるかわかりません。
しかし、容貌は目立たない初老の叔父さんに見えます。
ボーっとしているように見えますが、油断大敵です。人間は、いつかこの世を去ります。
死神には、いつ合うかわかりません。
江戸時代には、女性の死神が現れて、男性に死期を告げて、本当に死んだ事があったそうです。
悪霊と死神。
どちらも見たくないです。