秀吉と真田安房守は、良く碁を打った。
実力は真田安房守の方が上であったが、上手く負けてみせた。
秀吉の碁も常識的な手より奇手が多かった。
秀吉は、勝った時に言った。
安房守よ、そなたも信玄同様に形に拘るからまけるのじゃ、信玄より儂を手本にするが良い。
真田安房守の信玄贔屓は、有名であった。
秀吉に言われた安房守は、言い返した。
私は、信玄様の戦の仕方で三方ヶ原と上田の攻防で、徳川に敗北を味合わせました。
殿下の戦の仕方では、小牧のようになりますな。
秀吉のコンプレックスを突いた一言であった。
秀吉は怒らずに笑って言った。
安房守よ、徳川に勝ったのはそなただけじゃ、これからは、儂に忠義を尽くせ。そう言って慶長大判三枚を渡した。
三成は、左近にこの話を聞いて、改めて真田安房守を味方にしなければならないと痛感した。