幸村と安芸は、揃って清正に挨拶した。
加藤殿、良く参られた。
父上と話は、弾みましたか?
これは、私の妻の安芸です。
お見知りおきを。
そう幸村が言うと、清正は笑って、安芸殿、久しぶりだな、平馬の館で会った時は、まだ子供だったが、美しく成られた。
虎之助叔父様、照れますわ。
父上が、あのような身体になって、真っ先にお出で下さった、ご恩は、忘れていません。
安芸は、そう言って涙ぐんだ。
儂と平馬は、幼い頃からの友達だから、当然だ。
それにしても、安芸殿は、良い婿殿を選ばれた。
只の美丈夫では無い、勇猛果敢で、道理を弁えておる。
毎晩、可愛がってもらうが良い。
そう言われて、安芸は顔を赤らめた。
安房守殿、左衛門督殿、
また、参ります。
加藤殿、今度は拙者が参ります。
幸村が言うと、では、お待ちしています。
そう言って真田館を退出した。
昌幸の言葉が脳裏をよぎった。
仲間割れしては、家を滅ぼすか。
内府と治部か?
豊臣あっての儂だからな。