寅さんから学んだ大切なこと㊽

フーテンの子寅こと　皆川一

わたしの恩師、フーテンの寅さんこと渥美清さんが生前「なぁ、ハジメ、様々なモノの美しさや価値を見極める力を何というか分かるかい？」と聞かれたことがありました。

わたしが「それは洞察力ですか？」とお答えしたら、渥美さんは微笑みながら「似ているけど違うんだなぁ。洞察力とは物事を観察して、その性質や原因を見通す力のことをいうんだね。一方、ひと、もの、こころの美しさや、そこに秘めた価値あるものを見つける力ことを審美眼と言うんだねぇ、分かるかい？」・・・当時、十代のわたしにはチンプンカンプンでした(笑)

更に渥美さんは「それじゃ、ハジメは洞察力と審美眼、どちらか一つを神様がくれると言ったらどっちを貰う？」と、またまた未知の質問をしてきました(笑)・・・わたしはじっくりと考えた末に「審美眼ですかね」と答えました。すると「何故だい？」とまたまた渥美さん。

わたしは「なんか洞察力には感動という領域を余り感じませんが、審美眼には感動があり、ワクワクドキドキする様な感情がある様に思えるからです」とお答えしました。

渥美さんは満足したような笑顔で「ハジメ、大したものだ。いい考えだ！洞察力と審美眼、どちらがいいかは個人の感じ方だから結論は出ないけれども、俺もどちらかひとつと言われたら審美眼を貰うね。なまじ洞察力があると、評論や理屈が先行しそうな気がする。だけど審美眼はいいね。感情が先行して、まずは好き嫌いから始まり、そこには物語が生まれ、最後は愛が生まれる様な気がする。人生は泣き笑いだからねぇ」と・・・なるほど、理解できる様な、出来ない様な(笑)

そして、渥美さんは「人生は審美眼で、ひと、もの、こころの美しさを見つけることが出来たら、ためらわず単刀直入に言葉や身体でその感情を表現することが大切なんだねぇ。そうしないと、その価値を見逃し、物語が生まれなくなり、必ず、あとで後悔するんだねぇ」と・・・様々な力を持っていても理屈や評論や既成概念だけでは何も変化せず、気付いたら人生が終わってしまうということを渥美さんはわたしに教えてくれたのだと思います。

自分の審美眼を信じ、感性を信じ、未来を信じ、毎日を価値的に動き、感じ、生きたいと思う今日この頃です。

次回は渥美流「価値ある経営」についてお話させて頂きます。㊾へつづく・・・

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