寅さんから学んだ大切なこと㊴

フーテンの子寅こと　皆川一

わたしの恩師、フーテンの寅さんこと渥美清さんが生前、「嘘をつく人間は案外いい奴が多い。ただ、弱い人間なんだよね」と仰っていました。「嘘つき」と「いい奴」という言葉が＝なんだという事が、当時若かった私には理解できず、渥美さんに「なぜ、いい奴が嘘をつくんですか？」と聞いたことがありました。すると渥美さんはあの小さの目でニコニコしながら・・・

「いいかハジメ！なぜ人が嘘をつくのか？それは自分のことが一番大切だと思っているからだよ。自分を傷つけたくない。自分の価値を下げたくない。自分が怒られたくない。そんな奴がよく嘘をつくね」と・・・なるほど。また、渥美さんは・・・

「いざという時に力の出さない奴、そして逃げる奴も、やはり嘘をつくね。悲しいね。可哀そうだね。つまりは、そんな嘘つきも決して悪い奴ではなく、ただ弱い奴なんだよ」と・・・

わたし自身も幼い頃、自分が分解して壊してしまった家の置時計を姉の仕業にしたり、幼稚園を幼馴染と脱走して警察に保護された時にも、その幼馴染に誘われたと警察に嘘をついたり(笑)　確かに渥美さんの言う通り、実に自分ファーストだったと思います。でも、そんな嘘つきだった幼い頃のわたしも自分で言うのもなんですが、近所のおばさんたちからは案外、評判のいい子。素直な子で通っていました(笑)

そして、渥美さんは嘘にも大きく二種類あるとも仰っていました。「人を騙す嘘」と「自分を騙す嘘」と・・・「いいかハジメ！人を騙す嘘は必ずそのしっぺ返しが自分に戻ってくる。つまりは自業自得ということでいずれ反省できる。だけど、自分を騙す嘘は実に始末が悪いね。その嘘がいつの間にか本当だと自分で思い込んでしまう。つまりはその嘘を是正できず、反省できない。まさに立ち直れない無間地獄よ」と・・・

更に渥美さんは自分を騙す嘘とは・・・それが「言い訳」や「愚痴」そして「悪口」だとも仰っていました。わたしもこの渥美さんの話が腑に落ち、自分自身は強い人間になりたいとこの時、心底思いました。また、嘘つきは実にカッコ悪いとも思いました。

家の置時計を分解したのはわたしです。幼稚園から幼馴染をそそのかし、脱走を企てたのは紛れもなくわたしです。ごめんなさい。・・・あ～60年ぶりにスッキリした(笑)

次回は渥美流「お米の一生」についてお話させて頂きます。㊵へつづく・・・