今日は、短歌創作のために重要な読書について、どのように作歌につながるのか、そして本はどのように選べばよいのか、私の個人的な見解を書きたいと思います。
例えば、ある会社の名前を忘れてしまって、思い出せない。けれども、最初の一文字を思い出した途端、名前も思い出すことができた。
あるいは、久しぶりに同級生と話しているうちに、当時のエピソードや出来事を思い出し、懐かしくなった。
いずれもある刺激(手がかり)が、それと関連する名前やエピソードを想起させています。
脳は、このようにある刺激が入力されると、神経細胞の興奮が周辺の神経細胞に伝播し、それと関連する事象や概念、イメージなどを出力します。
これは言葉についても同様で、本を読んで言葉に触れることはその意味、文法的用法、今まで目にした様々な用例、文脈によるニュアンスの変化などを意識・無意識に想起させます。
こうして本を読むことは、同じ言語を操る短歌創作のためのウォーミングアップになるのです。
また、言葉は思い出すものであると同時に、新しく学ぶものでもあります。
情景や内面世界を描写するための技法を学んだり、社会の仕組みや人間に対する理解を深めることで、事実に即し、客観的で訴求力のある歌につながります。
※読書は脳に言語的な刺激を与えて言語能力を高める、原理的には単純なものです。
それに対し、運動によっても言語能力を高めることもでき、こちらは(一酸化窒素やアセチルコリンなどのによる)生理学的なアプローチと言えます。
そして、ある本の著者が自分の作歌の力を高めてくれるかどうかを推し量る指標を5つ挙げるとするなら、次のようになるのではないでしょうか。
①読書家-多くの文章に接している人の方が、良い文章を書くことができます。また、読書家の人の文章には、おのずと、読書によって得た新しい知識や考え方が含まれます。読書家の人の文章を通して、その人の読んだ多くの本にも接することができるのです。
②教育者-教育者として、人に教えている人は、説明がわかりやすく、なるべく簡潔に、しかし重要な部分は掘り下げ、スマートに説明してくれます。短歌も人に伝えるものですので、わかりやすくするという努力も必要になります。
③実務家-これは、その人が現場で意思決定を行っているかということ。経済学者で国家プロジェクトにも携わっているとか、政治学者で内閣のブレーンも兼任しているとか、理論だけでなく、その人のポリシーが実用に耐えるのか、実績による裏打ちがあるのか確かめます。芸術で真理を表現するためには、あまねく通用するものを題材にします。
④日本語の能力-日本語を正確に扱っているか。
⑤外国語の能力-母国語以外の言語を扱う能力(特に翻訳ができるか)も合わせて判断します。外国語ができるということは、それだけ言語運用能力があり、また他の言語からの視点や、表現方法を学ぶことができるからです。
(あとは文体が自分に合うか、内容に興味が持てるか、など興味を持って、繰り返し読めるかどうかでしょうか。結局繰り返し読んだものが自分の知識になり、言葉になります。)
最後に、著者のレベルと校正作業による文章の質が担保されている出版社を紹介します。
①みすず書房
②岩波書店
③ちくま書房
④講談社
⑤有斐閣
⑥創元社
⑦医学書院
これらの出版社の本であれば、文法や用法の間違った文章を目にする心配はさほどしなくてよいと思います。
終わり
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
これからも楽しく短歌をつくるための情報を、随時更新していきますのでよろしくお願いします。