ボレーでの「ラケットを前にセット」を科学する
特に影響が大きいのは、フォアボレーの場合なので、
以下ではフォアボレーに限定して科学する。(以下はその検討。仮説。)
「肘は脇腹の前」というコツがあるが、これはコンタクトに向かって
適度にスイングし始める時の肘の位置のことだ。レディポジションでの
位置のことを言ったものではない。
俺は、長らく勘違いしていたようだ。(笑)
ボレーの場合に、テイクバックという言葉を使わずに「ラケットセット」系列の
言葉を使うとすると、「肘を脇腹の前にセット」という表現になる。
そうだ、ボレーのレディポジションでの肘の位置には、大きく3種類
に分類できる。
1.肘の位置がかなり前。 ・・・わき腹≒脇の下 から8cm以上前方
2.肘の位置が、脇腹の前。・・・わき腹≒脇の下 から5cm位前方
3.肘の位置が、腕を自然に垂らした状態の時の位置。もしくは、1~2cm位前。
・・・この位置を、便宜上わき腹から0cmの位置とする
どれも、そのポジションからボレーは出来るが、カラダの使い方がそれぞれで
少し違うと考えた方が分かりやすいと思う。
2.肘の位置が、脇腹の前。
少し肩甲骨が前に出ているために、肘・上腕の動きが制約を受ける。
「ラケットを前にセット」する動きも、肘の移動距離が短くなることもあって
(後の3番と比べると)やややりにくい感じが残る。
また、胴体を使おうと思っても、少し肩甲骨が前に出ているために使いにくい。
この肘のポジションでは、前に倒れていくバランスでしかボレーできない
のではないか? (軸脚を前に動かさなかった場合;→つまりタメられない)
・前に倒れていくバランスで打たないようにしようとすると、
ちょっと肘を後ろに引かざるを得ないのでは?
3.肘の位置が、腕を自然に垂らした状態の時の位置。
最初から肘が後ろの方にあるので、あとは肘が前の方へ行くしかない、という
ある意味では合理的な待機姿勢である。
・一度後ろに行ってから前に行った重みは弱いが、
最初から前進だけしかしてこなかった重みは強いのだ
しかし、「腕・ラケットを前にセット」する動きを知らないと、振ってしまうボレーに
なりやすい姿勢でもある。(肩・腕の自由度が大きいから)
しかし、その自由度ゆえに、引きつけて打つボレーも、前に踏み込んでいく
ボレーも、軸脚でタメを作っておいて打つボレーも、しやすい。
ファーストボレーなど”前進する勢いがあって、軸脚を前に出していって打つケース”
では、上記の2だが、それ以外では3が一番良いと思う。
・ローボレーでは2でも良いかな?
「ラケットを前にセット」する、という方法の中で最善・最強のものを検討する際に
肘が一度後ろに行くと弱くなる、ということの他に、
もう一つ、肘のルートの問題があると思う。
肘がかなり前→→→(④肘を右横方向に動かす)→→→ラケットを前にセット
↑ ↑
(③肘を前に出す) (②肘を前に出す)
↑ ↑
@肘を自然に垂らした位置→(①肘を右横方向に動かす)→肘がわき腹の右横
「腕・ラケットを前にセット」直後の状態は、肘がわき腹の前(~10cm位まで?)に
あり、かつ脇が少し空いていて、上腕が少し外旋している。
これを、上図で①②のルートで動作した場合と、③④で動作した場合で比べてみる。
やや極端な比較だが、この方が傾向を如実にあらわしていて比較しやすいので
これで比較する。
まず、スタートの@地点から、③をしてから、④をしながら上腕を少し外旋してみよう。
どんな感じがしましたか? 2~3回やってみて感じが分かったら、今度は
スタートの@地点から、①をしてから、②しながら上腕を少し外旋してみましょう。
どうでしたか? ①②のルートの方が、やりやすい&より多く外旋できたのでは?
最終地点は同じでも、肘のルートにより、肩関節・上腕の状態が違ってくるのです。
上記2の「肘の位置が、脇腹の前」からスタートするということは、
”③肘を前に出す” の途中からスタートするということであり、③④のルートの
傾向に引っ張られるということです。
・実際には、@の位置からスタートする場合、①②ルートを使わずに、
直線的に動かしていると思う
・また、肩甲骨が少し前に出ていた状態からスタートする場合では、
肢位などによっては、肩甲骨を少し元に戻してから「腕・ラケットを前にセット」
に向かう方が良いケースもあるのではないかと思われる
肘の位置や肩関節の状態は、ラケットを前の方に伸ばし気味に持つか、左右ななめ気味に持つかでも違ってきます。自分のしたいボレーに合った肢位で構えたいですね。
・ナダルやフェデラーは、左右ななめ気味ですね。錦織もそうですね。
・ダブルス系の選手では、前の方に伸ばし気味が多いかも(ブライアン兄弟、杉山愛)
ラケットを前の方に伸ばし気味に持つ:
胴体と肘の間が、くっつき気味になる。狭い。
胴体を使いにくい感じがする。
左右ななめ気味に持つ:
胴体と肘の間が、かなり空く。
胴体や肩甲骨を使いやすい感じがする。
「前の方に伸ばし気味に」持っている人がどんな感覚でやっているか分からないが、
どんなボレーをしたいか、どんな身体操作を使いたいかで、選択すればいいと思う。
私のお薦めは、フェデラータイプの上記3です。
これで科学したことになっているかな?