選択的注意の効果とデメリット | KNのブログ

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選択的注意とは、特定の領域の感覚入力に注意を向けること。
ヤマを張る、というのはさらに一線を越えた場合なのかな?


ここでは、最近読んだ本「認識と行動の脳科学」から選択的注意の効果とデメリット
について書いてみたい。
 「認識と行動の脳科学」 甘利俊一監修・田中啓治編(東京大学出版会)2008.7月





1.視線を向けること無しに起きる内的な注意について
   Helmholtzは、暗室の中で電気スパークによって文字盤を瞬間的に照明した。
  あらかじめ文字盤の中央に視線を向けておいて、さらに視線を向ける部分とは
  異なる空間に注意を向けるようにあらかじめ意図していると、注意を向けた
  文字盤の文字は読めるが、それ以外の領域の文字は読めなかった。

   彼の実験で刺激を十分短い時間、たとえば100ms提示できたどうかは
  わからないが、その後追試されているだろうから、少なくとも100msでは
  注意を向けた領域の文字は読めるが、それ以外の領域は読めないと考えられ

  る。 (Helmholtzは19世紀に活躍した研究者)

  このことから、注意を向けた領域以外は、少なくとも100ms以上認知が遅れる
  or認知が困難なのではないかと推測される。[KN]

2.標的刺激検出の反応時間に現れる空間注意の影響
   被験者はまず画面中央の注視点に視点を向ける。次に注視点の上に矢印が
  出る。矢印の約800ms後に、標的刺激が注視点の左または右に提示される。
  標的刺激は、80%の割合で矢印の示す側の視野に提示され、20%の割合で
  反対側の視野に提示される。こうして、標的刺激が出たらスイッチを押すように
  し、スイッチが押されるまでの反応時間を測定した。

   矢印と同方向に標的刺激が出たら、矢印なしの時の基準値よりも20-30ms
  短く、逆方向に標的刺激が出たら30-40ms長くなった。
  逆に提示された時は、同方向に提示された時よりも50ms以上長くなった。
  (Posner et al., 1980)

  このことから、両方に注意を向けているのだが、片方により注意を向けている
  場合には、「こっちに来そうだ」との推測・注意がはずれた時には
  50ms-60ms位反応が遅れてしまうことが分かる。

3.標的刺激における空間注意の影響を、脳波で測定した結果
   これは、標的刺激の提示により初期視覚野のある後頭部に引き起こされる
  誘発脳波をはかったもの。(Eason et al., 1969)
   注意を向けた方向と刺激が提示された方向が同じであっても違っていても、
  誘発脳波のピークは刺激提示後の100ms後であったが、反対側に刺激が提示
  された時には、同側提示の時の半分弱の電位しかなかった。
  (V2野、V3野、V4野などの初期視覚野の活動と考えられている)

  このことから、注意の向けられていない刺激の処理が一連の処理過程の中の
  比較的初期の段階でブロックされるorかなり弱められることが分かる。

4.頭頂葉損傷患者における標的刺激検出課題の反応時間
   健常視野と障害側がある場合の測定結果。
  健常視野に標的刺激が出た場合には、手がかり刺激と標的刺激が同方向であっ

  た場合と逆方向であった場合の反応時間の差は数十ミリ秒であったが、
  障害側に標的刺激が出た場合には、反応時間はさらに300ms長くなった。
  (Posner et al., 1984)

  このことから、逆方向の場合の反応時間の”差”の最大値は350ms位だろうと
  思われる。[KN]
  また、頭頂葉は注意の開放に主に関わるとの考えを支持する結果であると考えら

  れている。[著者]
  また、サルを使った実験では、視床枕の活動抑制によって標的刺激を検出する
  反応時間が約50ms長くなったことから、

  視床枕は新しい部位に注意を捕捉し集中することに主に関わるとの説が有力に

  なっている。

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選択的注意にも、いくつかの種類・レベルがあるのではないかとKNは思う。
 ①特定の領域に注意をしている状態

 ②全体的に注意を配っているが、特定の領域に少し傾斜している状態
   =「こっちに来そうだ。」(だが、逆の可能性も対応できるつもり)

 ③全体的に注意を配っている状態

 ④運動の準備を仮に始めた状態
   =仮に右にくるとして準備を始める
    方向転換は、意外と早く、(②程度?)出来るのでないか?