The Tempest 40 トリンキュロー  2017 09 27 (Wed) 訳 松岡和子 ちくま文庫
 
 今回の前半は、キャリバンの独り言の続き。プロスペロの指示で、エアリアルに痛めつけられている。
 そこへ、道化師のトリンキュローが現れる。キャリバンは、トリンキュローを自分をいじめにきた妖精だと思う。見つからないように 地面に伏せる。
 トリンキュローはキャリバンをみて、魚の化け物だと思い、イングランドにもって行って見世物にだせば一山もうかる、 だろうと胸算用をする。。
                    

CALIBAN: but  For every trifle are they set upon me;  Sometime like apes that mow and chatter at me  And after bite me, then like hedgehogs which  Lie tumbling in my barefoot way and mount  Their pricks at my footfall; sometime am I  All wound with adders who with cloven tongues  Do hiss me into madness.       キャリバン: それにしても、けしかけられてこまめにやってくれるよ。  猿みたいに 歯をむき出してキーキーわめき、噛み付いたかと思うと、つぎにはハリネズミみたいに 俺が裸足で歩く道に  寝転がって、足の裏に ちくちく棘をさしやがる。かと思えば、体中にマムシに絡みつかれる、先の割れた舌で   シューシュー言いやがるから気が変になる。  
[Enter TRINCULO]
CALIBAN: Lo, now, lo! Here comes a spirit of his, and to torment me For bringing wood in slowly. I'll fall flat; Perchance he will not mind me.  
    [トリンキュロー登場]
キャリバン: 見ろ、そら見ろ、やつの手先の妖精だ、薪の運び方がのろいってんで いじめにきたな。  平べったくなっていよう、気づかれずにすむかもしれない。  
TRINCULO:  Here's neither bush nor shrub, to bear off  any weather at all, and another storm brewing;  I hear it sing i' the wind: yond same black  cloud, yond huge one, looks like a foul  bombard that would shed his liquor. If it  should thunder as it did before, I know not  where to hide my head: yond same cloud cannot  choose but fall by pailfuls.  What have we  here? a man or a fish? dead or alive? A fish:  he smells like a fish; a very ancient and fish-  like smell; a kind of not of the newest Poor-  John. A strange fish! Were I in England now,  as once I was, and had but this fish painted,  not a holiday fool there but would give a piece  of silver:       トリンキュロー: 風雨をしのごうにも藪も茂みもない、また一荒れきそうだってのに。風があんなに歌ってあ。  あの黒い雲、あのでっかいやつ、まるで薄汚れた酒袋だ。いまに中身をぶちまけるぞ。  さっきみたいに雷が鳴りだしたら、どこに頭を隠しゃいいんだ。あの雲の様子じゃあ、バケツをひっくり返したような  土砂降りになるにきまってら。  何だ、こりゃ? 人間か魚か? 死んでいるのか生きているのか?魚だ、魚臭い。大昔にとれた魚のにおいだ。一種の、  干鱈だが、とても新鮮とは言いがたい。妙な魚だ。俺がいまイングランドにいるとしたら、昔行ったことがあるが、  でもって看板にこの魚を描かせたら、お祭りの見物の阿呆どもが銀貨を一枚はずむだろう。  


 
 foul bombard 薄汚れた酒袋。
 bombard = (中世の)射石砲。大砲。
 
 shed = こぼす。(荷物を)落とす。
 
 Poor-John 干鱈? やつ、カモ、ホモ。
 
 
 
 当時の王は、結婚式や旅行に道化師を同行させたのだ。
 トリンキュローはキャリバンを見て、「昔イングランドに行ったことがある。お祭りでキャリバンを見世物にだすと、 観客の阿呆どもが銀貨をはずむだろう」と言っている。ここで、この劇のイングランドの観客を、どっと笑わせる。
 シェークスピアは、顧客(観客)サービスをする。