The Tempest 34 三倍の大物になる  2017 09 21 (Thu) 訳 松岡和子 ちくま文庫
 
 アントーニオはセバスチャンに、「いまより三倍の大物になる」方法を教えるという。
 セバスチャンの、「頼む。引き潮なら 生まれながらのものぐさが教えてくれ」というセリフはおもしろい。
 「Hereditary sloth」:生まれながらのものぐさ、というのは、はじめて聞いた(見た)。 
 彼らはすべて、エアリアル掌のひらのうえで、踊っているのだろうか。
 

ANTONIO:  I am more serious than my custom: you  Must be so too, if heed me; which to do  Trebles thee o'er.       アントーニオ: 私は真剣です。いつもとは違う。  あなたも真剣にお聞きください。そうすれば、いまより三倍の大物になれます。  
SEBASTIAN: Well, I am standing water.       セバスチャン: だが俺は流れの止まった水だ。 
ANTONIO: I'll teach you how to flow.       アントーニオ: どうすれば上げ潮になれるかお教えします。 
SEBASTIAN: Do so: to ebb Hereditary sloth instructs me.       セバスチャン: 頼む。引き潮なら 生まれながらのものぐさが教えてくれる。 
ANTONIO:  O,  If you but knew how you the purpose cherish  Whiles thus you mock it! how, in stripping it,  You more invest it! Ebbing men, indeed,  Most often do so near the bottom run  By their own fear or sloth.       アントーニオ: ああ、お気づきいただきたい、そんな茶化した  言葉のなかに 重大なもくろみが含まれ、脱ぎ捨てようとするものが、かえって身にまとわりつくのです。  確かに人は引潮に乗ると、自分の不安やものぐさのせいで 水底近くに沈むものです。
SEBASTIAN:  Prithee, say on:  The setting of thine eye and cheek proclaim  A matter from thee, and a birth indeed  Which throes thee much to yield.       セバスチャン: 先を聞かせてくれ。そのただならぬ目つき顔つきは なにか重大なことをいいかけ、それを吐きだそうと  まさに産みの苦しみを味わっている。  


 
 I am more serious than my custom:  私は真剣です。いつもとは違う。
 custom = 習慣、習わし。
 
 to ebb Hereditary sloth instructs me. 頼む。引き潮なら 生まれながらのものぐさが教えてくれる。
 hereditary = 遺伝的な。 sloth = ものぐさ、怠惰。
 
 the purpose cherish ①大事な計画が含まれている(小田島)。② 肝心のもくろみが目を吹いている(福田)。 ③ 重大なもくろみが含まれ(松岡)。
 purpose = 目的、意図、意味。 cherish = (望み、感情、考えを)こころに抱く。大事にする。
 
 throe = ≪文≫ 陣痛、産みの苦しみ。