妖精研究会  03 キャリバン

 
 2017 09 26 (Tue)  第二幕 第二場の冒頭、キャリバンの歎き。
 
 「お天道様が泥沼という泥沼から吸い上げる ありったけの毒が、プロスペローに降りかかれ、そして   じわじわと病気にしてしまえ。やつの手下の妖精どもに聞かれたって 呪わずにいられるか。
 だがあいつらが俺をつねったり、  小鬼に化けておどかしたり、泥んこ中に突き落としたり、闇夜に鬼火になって俺の前に現れ、道に迷わせたりするのも  奴が言いつけるからだ。
 それにしても、けしかけられてこまめにやってくれるよ。
 猿みたいに 歯をむき出してキーキーわめき、噛み付いたかと思うと、つぎにはハリネズミみたいに 俺が裸足で歩く道に  寝転がって、足の裏に ちくちく棘をさしやがる。かと思えば、体中にマムシに絡みつかれる、先の割れた舌で   シューシュー言いやがるから気が変になる」
 
  キャリバンは、地中海の孤島でキャリバンなりに満足して暮らしていた。
 ある晴れた日、白人が突然やってきて島を占領し、キャリバンを奴隷にする。さらにその白人が操る妖精がキャリバンを いじめる。
 キャリバンは嘆く。あの白人さえ来なければ、この島は自分一人のものだった。真水の湧き出る泉も、木の実の森も、たぶん 漁場も。
 小鬼もいなかった。鬼火も出なかった。ハリネズミともマムシともそれなりに暮らしていた。
 ある晴れた日、あの白人が突然やってきて島を占領しなければ、この島の支配者だったのになあ。

 


 2017 08 19 (Sat) 魔女シコラクスは、地中海の孤島でキャリバンを産み落とす。プロスペローとエアリエルの会話。

 

PAROSPERO:  Then was this island--  Save for the son that she did litter here,  A freckled whelp hag-born--not honour'd with  A human shape.   プロスペロー:  当時この島には―  あの魔女が産み落とした息子、まだら模様の餓鬼を除けば―人の姿に恵まれたものは  一人もいなかった。
ARIEL: Yes, Caliban her son.     エアリエル: いました、あの女の息子のキャリバン。
PROSPERO:  Dull thing, I say so; he, that Caliban  Whom now I keep in service.     プロスペロー:   馬鹿め、そういっているのだ。いま私が使っているのだ。あのキャリバンだ。