若竹七海 『悪いうさぎ』 | Pの食卓

若竹七海 『悪いうさぎ』

    「おじさん、ねえ、そのうさぎ、どうして檻に入れてるの?」

    ミチルが大きな声で男に尋ねた。 男はまじめくさって答えた。

    「ああ、こいつはね、悪いうさぎなんだよ」

                             (『悪いうさぎ』 地の分)


タイトルにもなっているキーワード 「悪いうさぎ」 ですが、

この言葉、皆さんはどのように受け止めたでしょうか?


今日読み終えた作品、 若竹七海さんの 『悪いうさぎ』 からの文章でした。

毎度若竹さんの作品からは精神的な衝撃を受けるわけですが、

この小説でも、やっぱり同じ印象を受けるのでありました。


若竹 七海
悪いうさぎ

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少女たちはどこに消えたのか?
家出中の女子高生ミチルを連れ戻す仕事を引き受けた私は、彼女の周辺に姿を消した少女が複数いることを知る。好評葉村晶シリーズ

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『依頼人は死んだ』 に続き女探偵・葉村晶シリーズ第二段 『悪いうさぎ』 です。

葉村晶は一見さばさばしており、繊細さに欠け女性っぽくなく、仕事一本の女性に見えるのですが、

その実、部屋作りに凝ったり、他人の領域に踏み込んだりと、

人間的にとても奥の深い魅力的な女性なのです。


そんな彼女の最も魅力的なところは、どんな状況下においても生活を愛しているということ。

この部分が本当に好きで、葉村シリーズを読むのが楽しみな毎日でした。

生活が好き、そんな人と一緒にいたくなる、そう思わせてくれます。


さて作品


冒頭の事件が全てを物語っているかと思います。

ただ仕事をしただけの葉村、ただその場にいただけの葉村、

それなのに全ての関係者が葉村の方を見る。

そして、色んな人が葉村の足を踏んづけていくのです。


身も心もズタボロになりながら、それでもカーテンを作ったり、

他所行きの靴を持っている葉村の姿を目にすると、思わず心が揺れ動きます。

どうしてこんなに酷い状況下なのに・・・ でも、そこなんですよね。

勝手に同情すんな、と葉村に言われそうです。


事件の発端は、ある女子高生の失踪にありました。

そして、その女子高生の行方を探るうちに、

一人、また一人と行方知れずとなった人が・・・


そしてその一人一人を結びつける、一つの言葉。


 「うさぎ」


この意味に気がつき、葉村は真相へと一歩一歩近づいていく。

そしてそんな葉村を襲う容疑者たち!


いつもの如く四面楚歌といった状況下において、

葉村が取った行動は、真相を突き止めること・・・

そのひたむきな姿にまたもや心を動かされm(ry


脅威のリーダビリティ、460ページにも及ぶ長編なのですが、

ページをめくる手が止まりません!

あれよあれよというまに事件が展開していき、

いつの間にか最後のページへとたどり着いている・・・


「事件の謎」 「中盤のサスペンス」 「意外性のある結末」 はミステリにおいて重要な要素ではありますが

この 『悪いうさぎ』 では特に中盤のサスペンスが優れていた!

中盤というか全編に渡りサスペンスフルな物語でした。


葉村シリーズ好き、女性同士のケンカ、若竹さん好き、普通のミステリに疲れた方、是非購入の方向で!