泡坂妻夫 『蚊取湖殺人事件』 | Pの食卓

泡坂妻夫 『蚊取湖殺人事件』

働き始めて一ヶ月、職場で付いたあだ名が 「ジェントルマン」 ・・・

本名より長いあだ名って考えものな気がする。

仕事にバドミントンに忙しく、もっぱら短編集ばかり読んでいる会長Pです。 こんばんは。


さて、本日読み終えた一冊は、泡坂妻夫さんの 『蚊取湖殺人事件』

書店で見かけた瞬間、迷うことなくレジに持っていける作家さんがいる。

それって幸せなことですよね。


泡坂 妻夫
蚊取湖殺人事件
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スキー場にやって来た慶子と美那。二人はゲレンデならぬ氷上で絞殺死体に遭遇してしまった。被害者の首には包帯が!?警察は二人を疑っているらしい。そこで彼女たちは身の潔白を証明するため、スキー場で知り合った男と協力して犯人捜しを始めるが…(表題作)。「謎解き」「奇術」そして「伝統職人もの」、バラエティに富んだ泡坂マジック、巧みの世界。
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決して評価が高いとは言えない作品群なのかもしれませんが、

僕個人の意見としては、とてもとても楽しく読めた一冊でした!

二時間弱で全て読みきれてしまう楽しさ、手軽さ、

そしてそれらの裏には決して表面にはあらわれない作家の巧さがありました!


さっそく読後感想文に入ります。


《読後感想文》


  雪の絵画教室

    一言で言ってしまえば雪密室もの。盲点とはこういうところにあるのかー、と感心しちゃいました。

    雪密室と絵と事件を結び付けてしまう泡坂さんに感服。

    『空中朝顔』 や 『椛山訪雪図』 のような妖しいまでの美しさとは違う、

    とこかしら牧歌的な面白みのある作品でした。

    出てくる刑事は 『煙の殺意』 で出てきたある刑事さんです。


  えへんの守

    泡坂さんの芸は見たことも無く、実名で出されている著作を手に入れたいと苦心しております。

    この作品は、奇術師としての泡坂さんの好みがにじみ出ているように思えます。

    型にはまった伝統芸能の粋に達した奇術も良い、ショービジネスの奇術も良い、

    だけど一芸に打ち込んだ奇術師の "一芸" が最もおもしろい! そんな印象を受けました。

    一度で良いからそんな奇術を観に行きたいです。


  念力時計

    曾我佳城さんを偲び、思わず涙が一筋・・・

    この作品は 『奇術探偵曾我佳城全集』 と世界を同じにする怪奇小説なような感じです。

    奇術道具愛好家の社家さんが経営する 「機巧堂」、そこに集まる奇術愛好家たち。

    そんな彼らの元に例のミステリーニに関わる奇術道具が・・・ ぐっときます。


  蚊取湖殺人事件

    純然たる犯人当てもの。泡坂さんの作品は色艶があり、人物の心情の描写があり、

    事件には必ず幻めいたものがあり、それでいてどこまでも本格・・・

    まさに理想的な作家さんなわけですが、そんな泡坂さんの犯人当て。

    《問題編》 と 《解答編》 に分かれていて、とっても燃えました!


  銀の靴殺人事件

    奇術師という観点から様々な謎とめくらましを作品内に散りばめる泡坂さん。

    この話で見せてくれた幻影は煌びやかにして見事なものでした。

    なんとなく、エドガー・ドガの作品が脳裏に浮かんで離れない話でした。


  秘法館の秘密

    惣太郎は三十センチほど上に飛びあがった。富子は肥っているので十センチほど飛びあがった。

    こんな文章がとても好きです。まじめな場面であるにも関わらず、ずっこけてしまう描写。

    稚気溢れる内容に加え、本格的な謎と解決が魅力の短編。


  紋の神様

    この話を読んで、女性には着物を着ていただきたいと思わない男性はいないはず!

    紋章について細に入って書かれているだけにも関わらず、

    その文章の隙間隙間からは艶やかな女性の魅力が漂う。

    うーん、これは見事、と思わずうなってしまいました。



やはり泡坂さんは素晴らしい、最近はミステリ好きというより、泡坂さんが好きなのかも?

なんておもうようになってきてしまいました。

ヨギガンジーのしあわせの書、見つけて買いたい!