若竹七海 『大道寺圭の事件簿 死んでも治らない』
某書店の若竹七海コーナーを空にした犯人Pです。 こんばんは。
今日、まだ空のままだろうなあ、と冷やかし半分に覗いてみたところ・・・
なんと、『心の中の冷たいなにか』 や 『ヴィラマグノリア』 などなど、
若竹さんの本が再び入荷されておりました!
そして勢いで一冊購入してきてしまいました・・・ 色々積んでますが;
買った作品は、本日紹介します 若竹七海さんの 『死んでも治らない』 です。
今回も杉田比呂美さんのイラストでござい。 よくみると、この男の人のシャツがイイ!
- 若竹 七海
- 死んでも治らない
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元警察官・大道寺圭は、一冊の本を書いた。警官時代に出会ったおバカな犯罪者たちのエピソードを綴ったもので、題して『死んでも治らない』。それが呼び水になり、さらなるまぬけな犯罪者たちからつきまとわれて……。大道寺は数々の珍事件・怪事件に巻き込まれてゆく。
ブラックな笑いとほろ苦い後味。深い余韻を残す、コージー・ハードボイルドの逸品!
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デビュウ作 『ぼくのミステリな日常』 で見せたように、若竹さんの構成能力は素晴らしい。
どんなにアクロバティックな構成でも、無理なくタイトルへと昇華される構成になります。
本作も相当曲芸めいた構成ではありますが、見事に全ての話が一つにまとまっております。
読み終えて物語の原点に立ち返るという構成は、若竹さんならではの技だと思います。
どのような構成かというと、まず、軸となる一つの事件を6つに分け、
その間間に別な事件を挟み込み、ラストにもっていくという独特なものです。
個々の事件を読み進めるうちは、それぞれ独立した一個の話のように感じるのですが、
最後の最後まで読むと、サンドウィッチに串が一本刺さったかのような、
衝撃的な一貫性を感じることができます。
( サンドウィッチに串が刺さるのが衝撃的な一貫性かどうかは怪しいものですが; )
一貫性のある作品として読み返す楽しみもありますが、
もっと評価したいことに、個々の作品で感じられるキレのある後味!
怪しげな推理でうやむやになる事件は一つとしてありません。
まるで快刀乱麻を断つがごとく鋭い一言で事件が終る。 それが気持ちよい!!!
例によってハードボイルド・ミステリなわけですが、葉村晶のそれとは違うものです。
どっちが好きかと言われると、葉村晶のハードボイルドの方が好きですが、
今回のような元刑事という典型的なハードボイルドもおもしろかったと思います。
全ての魅力は謎の設定のうまさにあるかと思います。
冒頭で提示される女性の変死体という 「謎」、これが全編に渡って、影となり、付きまとい、
物語が進むにつれて徐々に徐々に明らかにされていく。
「謎の提示」 と 「引っ張る力」 両方がバランスよく書き込まれていたと思います。
読者は飽きることなく、また押し付けがましさを感じることなく、能動的に物語に没頭できます。
謎や内容についても何か言いたいくらいおもしろかったのですが、
何分作品の性質上、読後感想文も書けない構成ですので、何も言いません。
『ぼくのミステリな日常』、『スクランブル』、《葉崎シリーズ》 をお読みの方は是非購入を!
あの人物や、あの学校、あの場所が出てきます!
こういったところに若竹さんの遊び心溢れるサービス精神を感じてしまいます!