綾辻行人 『時計館の殺人』 | Pの食卓

綾辻行人 『時計館の殺人』

    「館」シリーズはこれで五作目になりますが、ここに至っておぼろげながら、

    中村青司という建築家の顔が見えてきたような気がする―――

                                     ( 文庫版あとがきより )


十角館、水車館、・・・と続き、シリーズ五作目・時計館にて、

ついに館のアイデンティティが確立された感じがいたしました。

登場人物のみならず、綾辻さんの筆は、館そのものに強い自我を持たせてしまった感あり!


数々の難事件において見事なまでに騙されてきた明探偵 ぷろす ぺろう 。

奇跡的な導きにより、メイントリックと犯人を当てることができたもよう。

しかし!この時計館の良さはそんな些細なことにあるのではなかったー!


文庫で600ページを越える大作なのですが、その大作に見合った内容!

トリック―動機―場所、三つが合致した傑作だと思います。

その証拠に、読後に訪れる奇妙な現実感・・・ 時計館の物語が一気に思い返されます。

そして、シリーズ各巻通して行われる、館の解体・・・ 芸術の粋に入っていたかと思います!!

それが本当に素晴らしかったー!


個人的にかなりの大ヒットを感じた 綾辻行人さんの 『時計館の殺人』 です。


綾辻 行人
時計館の殺人

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館を埋める108個の時計コレクション。鎌倉の森の暗がりに建つその時計館で10年前1人の少女が死んだ。館に関わる人々に次々起こる自殺、事故、病死。死者の想いが籠る時計館を訪れた9人の男女に無差別殺人の恐怖が襲う。凄惨な光景ののちに明かされるめくるめく真相とは?第45回日本推理作家協会賞受賞。

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泡坂さんの 『乱れからくり』 に引き続き、日本推理作家協会賞受賞作。

綾辻さんは最高傑作と名高い 『霧越邸』 を脱稿したときに、

この 『時計館』 のメイントリックを思いついたそうです。


事件の舞台は鎌倉にある巨大な時計塔を備えた館、通称 『時計館』。

時を刻まぬ時計塔、そして館内に108ある時を刻み続ける時計たち。

話を聞いているだけで頭がおかしくなってしまいそうな館ですが、

さらに、この館に住まう人々を襲った相次ぐ不幸・・・


いつしか 『時計館』 には少女の幽霊が現れる、という噂が立つようになっていった。

その少女の幽霊の降霊会を行おうと、霊能者をはじめ、雑誌編集者、

そしてミステリ研究会のメンバーが集まったのであった。


なんとなく 『十角館』 の雰囲気をはしばしに感じる 『時計館』 ですが、

それもそのはず、「《館シリーズ》 は順番に読まないといけない」 という意味がよくわかります。

前作のネタバレはありませんが、順番どおりに読まなければ、この魅力は半減です。


依頼主の悪夢を現実化する中村青司の創造物 《館》 ・・・

これからどのような動きを見せるのか、『黒猫』 『暗黒』 が楽しみであります。


しかし、今回の《館》は最高に良かったと思います。

一読していただければおのずとわかるかと思います。

どうして《時計館》であったのか、その点が素晴らしかったー!


《館シリーズ》、順番に読み進めている方、これから読まれる方、充分期待してもOKです。

未読の方、『十角館』 からまとめて買ったらいかがでしょうか!