『ワトスン役』の視点で書く利点 ~「フェアプレイ」と「サプライズエンド」の両立
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前回に引き続き 「ワトスン役」 について考えを展開してみたい。
drunker's high様 のブログ記事 「ワトソン考」
に触発されて書いた前回同様、
『続「ワトソン役」考』
にまたも興味深いテーマを発見してしまいました。
それは「ワトソン役」による「フェアプレイ」の提供だ。
「フェアプレイ」 の実現に関しては、カラクリリリカル(管理人B)がニュースで取り上げた 、
『犯人当て小説におけるフェアプレイについて (RinRin王国 様)』 が細にわたり言及している。
そこでは様々な状況下における 「フェアプレイ」 の可能性について述べられているが、
「フェアプレイ」 と 「ワトスン役」 の関係については述べられていないように思われる。
drunker's high様の 『続「ワトソン役」考』 ではそのことについて言及されていて興味深い。
drunker's high 様によると名探偵ものがしばしば「ワトソン役」の視点で書かれる理由は:
フェアプレイを提供するためには、フェアな立場で情報を提供できるように物語を描けばよい。
そういった情報を提供できる人物の視点で物語を展開すればよい。
そう考えたとき、「ワトソン役」というのはうってつけの「装置」になりうる。
と述べている。
事実その通りだ。しかしそこにはもう少し興味深いテーマが隠れているように思える。
それは「情報」だ。
推理小説を読む際、最も興奮を得られる状況は、 「サプライズエンド」 ではないだろうか。
もちろん十人十色、その人の好みによりけりだが、
本格ものの定義としてサプライズエンドが採用されていた時期があったことを考えても、
読者を喜ばす大事な要素ということが可能だ。
「サプライズエンド」 を実現する場合、もっとも手っ取り早く且つ簡単な方法は、
読者を驚かすために 「フェアプレイ」 を放棄することにある。
犯人当てに限らず、推理小説のプロットを 「問題編」 と 「解決編」 に分断するならば、
「解決編」 の途中で新情報を付加していけばサプライズエンドを実現することは容易だ。
つまり 「情報の較差」 を引き起こすのだ。
しかし、それでは 「本格」 ものが好きと言う読者は納得しない。
それどころかストレスを感じ、駄作という評価を与えかねない。
そうなってしまっては読者を楽しませるという当初の目的が失われる。
せっかくの 「情報の較差」 が負の方向に作用してしまっている。
「情報の較差」 の魅力を活かすには 「フェアプレイ」 の実現が必要不可欠となる。
如何にして「情報の較差」と 「フェアプレイ」 を両立させるかという問題を解決するためには、
「与えられた情報は同じだが、情報の応用の仕方で差をつける」 という状況を作りだす必要がある。
いわゆる技法ミスディレクションの一つだろう。
正しく情報を応用する役を 「名探偵」 、誤った応用をする役を 「ワトスン役」 にすれば良い。
このように考えると 「ワトスン役」 の視点で推理小説が書かれる利点がよくわかる。
常に情報を正しく応用する 「名探偵」 を語り手に据えた場合、
「名探偵」 と読者の間の情報差が無くなる。
言い換えると作者と読者の間の情報差が無くなる。
そうなった場合、 『作者VS読者』 という図式が不成立となり、
フェアはフェアだが 「フェアプレイ」 とは意味合いが異ってしまう。
ガチガチの 「本格」 好きな読者には少々物足りないことだろう。
その点、情報を正しく応用しない 「ワトスン役」 を語り手にすると、
「与えられた情報は同じだが、情報の応用の仕方で差をつける」 という状況は容易に作ることができる。
また応用の仕方に差があるため、 「名探偵」≒作者VS読者 という図式も守られる。
これにより 「フェアプレイ」 を守りながら 「サプライズエンド」 を生み出すことが可能になる。
「ワトスン役」 の語り一つで推理小説の魅力が幾倍にも膨れ上がる。
結論:
「フェアプレイ」 による 「サプライズエンド」 を実現するためには、
「ワトスン役」 の視点でプロットを進行させることが有効だ。
「フェアプレイ」 により 「サプライズエンド」 を生み出せるよう 「ワトスン役」 は作られたようにも思えてくる。
もちろん 「ワトスン役」 のみが上記の二つを両立させることができるわけではない。
作家の筆力により「名探偵」でも可能だ。 また全知の第三者による語りも有効だろう。
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