譲二は憧れの制服が着られる中学生に。

藤川家の貧乏は変わらず、制服も教科書も自分で稼いだお金で買いました。

この年から、小学生の教科書は無償に。

中学校の教科書は、譲二が卒業してから無償になり、悔しい思いをしたことは今も忘れません(-_-;)


電車の切符も大人料金になり経費がかさむことも大変でした。

当時は券売機が少なく、切符は窓口で買うことが多かったので、

小学校の意識が残っていた譲二は、ついつい

『子ども一枚』

と、切符を買おうとしてしまった(^^;)

すると、駅員さんから

「君、その制服はそこの中学でしょ?もう大人だよ!」

と、よく言われました。

慌てて、大人1枚と言い直したものです(^^;;


御用聞きは、入学式と準備で休んでいました。

そしてようやく時間ができたので、酒屋に挨拶に行こうと思っていたのですが、12日と延び延びになってしまったのです。


お兄さんにビン集めをしていることが見つかってしまうかを心配していた時より、ドキドキ感が大きかった。


それは小学校を卒業したら、御用聞きをやめようと決めたからでした。

仕事内容は面白かったのですが、接客は、子どもの譲二にはやはりきつかったのです。


更に、もうひとつ物理的な理由が。

それは、中学校と酒屋が真逆の地域なので、通勤が大変なのです。

中学の授業の終業時間は小学校より遅いので、バイトの開始時刻に遅刻してしまうのです。


譲二は春休みに御用聞きをしている時に、何度もお兄さんから

「中学に入ってもウチでバイト頼むな」と。

その時、ついつい

『もちろん、こちらこそお願いします!』

と、軽い気持ちで了承していたのです(^^;)


しかし、いろいろ考えた末に御用聞きはやっぱり無理だ、辞めようと決めたのです。


 入学式が終わり酒屋へ挨拶に行くことに、凄くプレッシャーを感じていました。


子どもなのにこんな悩み事ばかり(^_^;)

心の中で、切符は大人だけどまだ12才なんだけどなぁと、少し落ち込んでしまった。


しかしズルズルしていても仕方ないので、決意して酒屋へ向かうことに。

毎度毎度のことですが、別に悪いことをして謝りに行く訳ではないのだからと、心の中で自分を激励しました。


酒屋に入ると、いつもは殆ど居ないご主人や店員さん、そしてお兄さんが待っていました。


そして、ご主人はいきなり、

「入学おめでとう!また、よろしく!」

と、言ってご祝儀をくれたのです。

譲二は心の中で、

〝えっ〟

と、思いながらも思わず受け取ってしまいました。


これは子どもの譲二にとっては、先制パンチを喰らったような思いになったのです。

更に、みんなから祝福されている中、お兄さんはプレゼントをくれたのです。

(あっ、もう今日は辞める話は出来ない)

と、思い諦めてしまったのです。


その時、

《辞めます!》

と、言えなかったのは気が小さくて言えなかったこともありますが、その時は酒屋の人達の気持ちが感じられて、

《こんなにも期待されているなら、よし挑戦してみよう!》

と、思ったのです。


譲二は昔から簡単な事と難しい事を選択する時は、自身の成長の為にまずは難しい事に挑戦する事を第一に考えていました。


結果、中学1年の譲二は御用聞きを続けることになりました。


譲二は心の中で、大きな葛藤と闘っていました。


辞めることをはっきり言えないで悩んでいた譲二に、自然の流れが追い風になってくれたのです。



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