酒屋のお兄さんが軽トラックで迎えに来てくれました。
すこし緊張していた譲二を見て、お兄さんはニヤっと笑って、
「あれだけ堂々と長い間、ビンを持ってきていたんだから大丈夫だよ」
と、励ましてくれた。
酒屋へ向かっている道中、緊張は更に高まっていった。
ビンを持って歩いていた時はかなり遠くに感じていたのが、車だとアッと言う間に着いてしまった。
店に着くと、ご主人が出迎えてくれました。
やはり、ニヤっとして
「待ってたよ、頑張って!」
と、言葉を掛けてくれたのです。
あとで、お兄さんから聞いたのですが、
「子供だけど根性がありそうで、店の話題になりそうで楽しみだ」
と、ご主人は期待していたみたいです。
今、考えると客寄せパンダぐらいに思っていたんですかね(^^;)
その後、店の人を紹介をしてくれて、最後に奥さんを紹介されました。
すると、奥さんはいきなり
「お昼まだでしょう⁇」と。
初出勤の緊張感でお腹は空いていませんでしたが、まだ昼食を食べていないお兄さんと一緒に食べました。
おかずが沢山あって温かい家庭料理そのものだった。
時間がある時は、
「昼食・夕食はいつでも食べてね」
とも言ってくれました。
いよいよ御用聞きへ出発です。
その時、今でも忘れない出来事が。
譲二に、専用の前かけを渡してくれたのですが・・・。
その前かけを付けると、背が低いために前かけが足もと近くまできてしまい、その姿を見て一同大爆笑🤣
譲二は恥ずかしくて、
(えーこれ嫌だなぁ)
と、心の中で思ったのです。
歩こうとすると前かけはだらしなく地面に付きそうになってしまい、一同はまたまた大爆笑🤣🤣🤣
胸の近くまで前かけを上げて、ヒモを少し強めに締めたら、ちょっとはまともになりました(^^)
それから、ノートとボールペンを渡されて準備完了です。
今思うと、
ー10才でよくやったなぁー
と、自分を褒めてあげたいです。
最初はお兄さんと一緒に各家庭に訪問して、譲二を紹介してくれました。
どの家でも、
「あら若い坊やが偉いわねぇ」
と、言ってくれました。
そして、お兄さんは注文の取り方の手ほどきを見せながら、いろいろと細かいコツまで教えてくれたのです。
(そんなに難しい事じゃないなぁ)
と、思った。
あとで店の人に聞いたのですがお兄さんは、店一番のやり手で個人売上もダントツだったそうです。
この経験も、後の譲二にとって本当にいい勉強になったのだ。
何軒か少し回った後、お兄さんがいきなり、
「じゃあ、ここから一人でやってもらうから」と。
それを聞いた譲二は、なぜか体がブルブル状態に。
そして、考える暇もなく生まれて初めての御用聞きをすることに。
頭がまっ白になりながら、一軒目に挑戦したのです。
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