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oven


Notes

自宅にあった小さなオーブンにも カフェにあった大きなオーブンにも

ぴたーっとその扉に張り付いたまま 中を延々と覗きこんで離れないような人でした。

鼻息で曇る扉を袖で拭いながらじっと目を凝らし

もわもわと膨らんでいくスコーンやマフィンやクロワッサンをただただ愛でている至福の時間。

「 試作 」 はまるで私の大好きな 実験 のひとつなのです。

ドライ無花果 は結局、成功しなかったけれど。

Mr.Autumn


Notes

虫刺されの痕が少しずつ薄くなっていったり

1日に何度も 「 オナカスイタ~ 」 を溢してしまったり

チェック柄のブランケットを用意してくれているCafeの隅の席に腰掛けて 

分厚い本のページをめくりたいような気持ちになったり。

どうやら Autumn氏 はもう私のすぐ傍までお越しになっているようです。




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「 やれやれ Mr.Sum には随分気を揉ませられたよ 」

両手を後ろに組み ふいに私の隣に姿を現した彼は 

少し余裕有り気に背筋をまっすぐ伸ばしたままこちらのほうをチラと見て

片目で小さくウインクをしながら

「 今の間少しだけキミに歩幅を合わせてあげよう 」

そう言って、それでもやっぱり私よりも幾分早足で少し前方を颯爽と歩いています。


艶々しい立派な杖を時折軽やかに振り上げては 歩道の並木に黄や赤の色をのせたり

ベンチで休む老婆の背中に大判のカシミヤストールをふわりと掛けて。


「 いいかい、私にとっちゃこんなのは実に容易い作業だ 」

「 そんなことより難しいのは アレ なんだよ・・ 」

そう言いながら Autumn氏 はその杖で頭上の高いところを指しながら ほんの少し渋い表情を見せました。

そうして目を細めて ひと呼吸置いてから 小指をピンと立て

カタツムリほどの小さな渦を描くようにくるくると杖を回し始めたかと思うと

さっきまで水彩のように薄く広がっていた雲がだんだんと小さな固まりををつくっては

順序良く列を為していきました。

その姿はともすると巨大な魚の鱗のようにも見えました。



予定以上にいい形になった、というようなニュアンスで彼は右側の口角を一瞬緩ませたのを

私はまるで気付かなかった振りをして空の魚に見惚れているうちに

彼は胸ポケットからシルクのハンカチを取り出して、杖の先のほうを慣れた手つきでキュキュと拭きながら

「 このシゴトはまだ後継者が現れなくてね 手を焼いてる 」

と言いました。





空の方から彼へと視線を移そうとしたそのとき、突風がビルの間からこちらの歩道へと流れ込んできて

私たちの上に色とりどりの葉のシャワーを降らせてゆきました。

地面に重なる色、色。


「 あぁ・・ ほら、上をみてごらんなさい 」

私がもう一度空を見上げると さっきまで泳いでいた巨大な魚はもうその姿を残しておらず

気まぐれに筆で撫でたような雲がところどころにぼやけた線を漂わせていました。


「 もうこのシゴトは永いがね、空と女性の移り気だけはどうにも私の手に余る 」

Autumn氏 は小さく肩をすくめて少し困ったような素振りをしてみせました。



オンナゴコロトナンチャラ?


「 さぁ急がなくては Mrs.Win はとてもせっかちな婦人でね、私にはいつだってそう時間がない 」

そしてもう一言 「 どうぞ 今 を楽しんで 」 を追加した彼は

私の方に杖を向け、シュッと一振りしたあと気品高いお辞儀とともに去って行きました。



Notes

ふと手の中を見ると そこにはキレイな色を持ったばかりの秋桜が咲いていました。



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はい。

というような気持ちの悪い空想をしながら秋桜の写真を撮っていた9月最後の週末。

突然涼しくなったもので、お休みが多すぎたもので、頭がヘンになりました。


あー たのしかった。



oyasumi *






Little press


Notes

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紅茶専門のCafeを営んでいる彼女の胸の奥深くに眠る悲しみは

あまりにも突然に訪れたお父様の死でした。

家族の想い出 と 料理 。 たった100冊だけの little press が出来ましたとご連絡を頂いたので

潮風の届く高台の 古びた集会場が真っ白にリノベーションされたそのCafeへと出かけて参りました。

そして、ひとまず裸足にね。

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ちょっと出遅れたせいで スリランカカレー と 満月のチーズケーキ はもう品切れでした。

裸足のよく似合うAと2人でアイスティーをゴクゴク飲んで、足をぶらぶらさせながら風に吹かれて。

走り回るおチビさんたちにきゅんきゅん癒されて。

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Notes Notes

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かもめ食堂 もそう。 食堂かたつむり もそう。

誰かの想いによってつくられた料理はいつも 誰かの心をそっと持ち上げる。

ただ生きるのに理由は要らないからね って
 
頭を撫でてもらっているような感覚がきっと、いくつになっても嬉しかったりね。

そんな料理をつくれる人になれたらすてき。

(黒胡椒がどーの言ってる私は明らかに遥か遠いような・・)

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September12


Notes

日曜日ですって。 9月ももう半ばにさしかかろうとしているなんて。

ブランチに明太子パスタをこしらえながら、病院帰りのぐったりワンコを撫でながら

居間とお台所を行ったり来たり、行ったり来たり。

お蔭で少し茹で過ぎたパスタは ノン アルデンテ。

まぁ私1人用なので軽く目をつぶりましょう。

だけど黒胡椒は荒挽きでなくちゃ。 そこはなんとしても守り抜きたい地味なこだわり。



Notes

前もってお休みの日に予定を入れるのが兎角苦手な私ですが

秋は少し背伸びをして予定を入れてみることにしました。

これが 私の中のささやかな 革命。



さて、 手土産に美味しい珈琲を持って little press のお祝いに出かけてきます。



→ 9


Notes

8月はいくつもの通り雨と、5つの虹と、16コの流れ星に出逢いました。

そして、勢いよくソラへ立ち昇ってゆくこんなに美しい積乱雲にも。

私1人に収めてしまうには罰当たりなほどの奇跡の重なりを いくつ収めてきたでしょう。


両極の想いと向き合ったまま、 ただ向き合ったまま 9月になりました。

自転車に乗って出かけたいのだけれど、地図が見当たらなくて困っています。