past
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何年か前、一人暮らしを始めて10年目、無職になって2ヵ月目の、
とある生温かい日の出来事を、今日なぜかふいに思い出しました。
女の子同士のお喋りや、食器を片付けたりミルクをスチームしたり、レジを開け閉めするような、
主張しないそれぞれが重なり合っていくカフェの騒音が、いついかなる時も、私にはとても心地良く。
その日もいつもと同じように快を求めて夕暮れ時にふらりと近所のチャイナカフェへ。
昼ごはんとも晩ごはんとも区別のつかない、温かいソイラテとココナッツマフィンの定番メニューをオーダーして
お会計が終わると同時に、手際良く用意されたその2点の乗る小さなトレーを受け取って。
そうして発行されたばかりの求人誌を小脇に挟んだまま 隅っこ の空いた席を探していると
その目線の先に、見覚えのある顔がこちらのほうを見て大きく手を振っている。
「いやー!ちょっとー!ひさしぶり~!」な相変わらずハイテンションな彼女はおそらく4,5年振りの再会になる
カフェ勤務時代の元同僚、ナオミ。
ナオミは歳は確かひとつふたつ私より下で、その割には時々妙にお姉さんめいたことを言い、そしてとにかくよく喋る。
彼女も偶然1人だったこともあって、流れでそのまま一緒にお茶をすることになり、互いの近況を一通り話す。
その内容のほとんどは、彼女の最近の失恋の話で、私も何かコレというものを喋りたかったけれど、
無職でひきこもりがちだったためまったくと言っていいほどネタがなかった。
聞けばネイルスクールの帰りに次の試験の勉強(ネイルの)も兼ねてここに寄ったらしく、
彼女の爪はそれはそれはきれいにデコレーションされていて、いわゆる、 オンナの爪 だった。
「ねぇui、爪見せて。」と言われ、素っぴん丸裸状態の粗末な爪を渋々見せた。
ふ~んと言いながらまじまじと私の指先を見つめ、「今度練習させてね。」と微笑む彼女に、
私も、「ぜひ。」と笑った。
あの頃の私の頭の中は、ネイルや衣装や恋の入り込む隙などまるでなく、
ただただ、来月の家賃をどう工面したらいいか、
このまま社会復帰できなかったら、、などという不安にすっぽりと覆われたまま窒息しそうな日々を送っていた。
夜にはナオミの友人も合流して1階のカフェから2階の中華系居酒屋に移動。
外で誰かと食事をするのも、ビールを飲むのも、くだらない話で笑うのも久しぶりで、
「あ~、、4日振りに人と喋った。」と私が溢すと、2人が声を揃えて「嘘でしょ?」と目をまんマルにした。
「信じられない!女は1日に2万語喋らないかんとよ!!」とナオミが声を荒げた。
そのとき初めて聞いたけれど、女性は1日に2万語喋らなければストレスになるのだとか。
2万語といえば、薄い単行本1冊程度の文字数だとか。
因みに男性は7千語。
「あんた4日間喋ってないんだから、今日10万語喋んなさい!!」などと無茶を言ってくるオンナ爪のナオミ。
ナオミがいつだってストレスフリーな気がしていた理由がそのとき少しだけ解ったような気がして、妙に可笑しかった。
日々ソイラテとマフィンが主食だった私にとって、贅沢極まりない食事とお喋りでお腹も心も満たされて、
結局最後まで、「無職に財布は出させません!!」と強引に言い張っていたナオミはやっぱりお姉さんみたいだった。
・・・・今日は長くなりました。
久しぶりに家に引きこもった1日で。
ストレスを溜めないよう、なんとか2万語を目指してみましたが、数える気にもなれません 笑。
お蔭さまで、今は自営業です。








