「ポプラの木には〜ポプラの葉〜♪」
中学生の時に合唱祭で歌った『名づけられた葉』の冒頭の一説だが、実際にポプラってどんな樹木?って聞かれても、正直見たことがなく、よくわからなかった。
ここスペイン北部、バスク州ビトリアは、州都で人口もそこそこいるにも関わらず、自然が多く、スペインの中でも静かで美しい都市のひとつだ。
残念なことに、僕がポプラを認識したのは、あたりが真っ白になるほどの白い綿のような花粉のせいで、目はかゆい、鼻水は止まらないという現象が起きて、「日本では花粉症になったことないのになぁ」と思って調べてみたところ、ヨーロッパではポプラの花粉が猛威を振るうとの情報を得たことで、綺麗な歌のイメージから、最悪の第一印象を植え付けられての初対面だった。
花粉症で外にも出たくない中、2022年5月、僕の所属するアーロデポルティーボというチームとの来期の契約交渉の場に出席した。
話し合いの場には、クラブのGM、監督、コーチ、マネージャーの4人が同席し、選手が一人一人呼ばれて、話をする。
「来年もタクがチームに残るとしたら、出番は少ない可能性がある。それはこれから良い選手が獲れればの話だがね。勘違いしないでほしいのは、タクが悪い選手、タクが悪い人間というわけではない。よくやってくれたし、君は良い人だよ。ただ、仕事として言うならば、我々が考える来シーズンやるゲームスタイルには合わない。わかってほしい。」
監督に第一声からはっきりそう伝えられた。
それもそのはず。
僕をスカウトしてくれた監督は、最後の8節を残して、解任となり、新しい監督とコーチ2人が来て、いきなり全く試合に出られなくなったからだ。
「既にクラブにオファーが届いている通り、君の移籍の手伝いはいくらでもするからな。いつでも言うんだぞ。」
という監督の言葉も何も耳に入らず、
「本当にありがとうございました。」
とだけ言って、社長室を後にした。
外に出て、帰る途中、ポプラのせいで目が潤むのか、クラブからの通達のせいで目が湿っているのか、わからなかった。
アーロデポルティーボは、1シーズン前に降格し、今のリーグにいるが、優勝して、昇格して、1年でスペインリーグ2部B (Segunda División B) に戻りたいクラブであったため、3部リーグ (Tercera División) の中では、圧倒的に上手い選手が集まっていた。
ほぼ全員がリーガのクラブのユースだったり、レアルマドリードのBチームからトップに上がれなかった選手だったり、カンプノウでメッシと対戦したことのある選手すらいた。
不運にも結果は出なかったが、チーム内の競争も激しく、毎回の練習は死に物狂いになってやらなければならず、すごく上手くなることができた反面、精神的には疲弊した。
キャプテンから、
「タク、チームに忠実なプレー、練習での取り組み、それ以外の時間でのプロフェッショナルとしての意識、みんな若いメンバーもそうであってほしいよ。アーロは君のことを忘れないよ。」
とのメッセージが唯一の心の救いだった。
夏休みを日本で過ごし、遠隔で地球の半周向こうの世界にある色んな可能性を探った。
スペインをはじめ、ヨーロッパ中、アジアやオセアニアも…。
オフ中、日本全国の子ども達に指導をする中で、サッカーをこよなく愛し、プレーするのが楽しい、上手くなりたい、勝ちたいと思う子ども達がたくさん存在し、それに関わる大人たちも物凄い情熱を持っていることを再認識した。
リサーチした結果、僕が来期上のリーグや良い条件でプレーできる環境は数知れずあった。
そのままアーロでプレーを続けて、ベンチスタートだけど、スタメンを狙って頑張る手もあった。
でも、もし僕が僕の指導者だったら、どの道を選ばせるだろうか。
ちゃんと試合に出て、熱中して、楽しめて、良い監督、良い仲間と喜べるチームにいくことで、今後の選手としての成長と、人間的成長、その後の指導者としてのキャリアに繋がる最適解を選ばせるのではないだろうか。
2019年3月に、
「残り10試合だけの助っ人としてうちに来てくれ。」
とわざわざ僕が働くアラベスの事務所まで来て、オファーをくれた監督がいた。
それ以降毎年オファーをくれ、
「チームの中心としてほしい。タクミが来れば絶対昇格を目指せるから。」
と、恒例の行事のように今年も電話をくれた。
一個下のカテゴリーにはなるが、メンバーを見てみると、奇跡的に僕と他のチームで以前一緒にプレーしたことのあるメンバーが多く、ベストメンバーを組んだら、そこそこやれるチームであることが判明し、「このチームで自分が全力を尽くして、主体的になって、昇格を勝ちとる」という目標ができた。
今期はこのナンクラレスCDというチームでプレーをする。
" 世界中どんな場所でも、どんな時でも、何歳からでも、努力次第で現状を好転させて、最高の瞬間を手に入れることができる。
それも、ポジティブに、主体性をもって、楽しみながら。 "
それを言わずとも伝えられる指導者になるべく、選手として、ナンクラレスでプレーをすることに決めた。
今、プレシーズンのラストの1週間で、今日は、まさかのアラベスの2軍との練習試合がある。
仕事で関わっているスタッフ、練習を分析している選手達が相手で、所縁のグランドで一戦を交えることがどんなものなのか、ちょっと楽しみだ。
きっと、
「なんでお前そっちにいるんだよー。裏切ったなー!!」
って、スペイン式の冗談が飛ぶことだろう。
さあダークホースとしてナンクラレスが優勝、昇格できるか、サッカー人としての手腕と頭脳が試される。
2位相手に一矢報いる今シーズン初ゴール✨
前節初アシスト、今節初ゴールと、終わりよければ全て良しの気持ちのこもったプレーができた。
最後は結局ユーティリティなところと、攻撃面が評価されて、前めのポジションが多かったが、それがナチュラルな自分でもある。
この試合は負けちゃって、試合後のロッカールームの雰囲気は暗かったけど、監督がこっそり、「良いゴールだったぞ。」と、にっこり伝えに来てくれた。
その他のチームメイトにも、おとなしく祝福してもらえ、1年が少し報われた気がした。
僕は、指導者で誰が好きかと聞かれたら、オシムって10年前から答えていた。
ウォーミングアップ前に、ニュース速報で、オシムさんが亡くなったことを知り、衝撃を受けたが、彼には本などの文字の中で、たくさんのことを学ばせてもらった。
一度お会いしてみたかったが、その夢も叶うことはなく、僕のゴールに変えて、感謝を伝えさせてもらった。
実は僕とオシムさんは誕生日が一緒で、それに気づいたのはわりと最近であるが、そんなことも含めて、改めて敬意を表したい。
サッカーのことはサッカーでしか返せない。
ピッチ上で起こる喜怒哀楽は、ピッチ外のそれとは全く関係がない。
感謝はグランドで。ボールと共に。















