僕は迷っていた。
十字路の真中で。
どの道を通ってここに辿り着いたのかも思い出せない。
それくらい、この場所で考えこんでいた。
どのくらい時間がたったのだろうか。
太陽が、
僕の真上で僕を焼き殺そうとしている。
ひどく暑い。
太陽が、
僕の体にめり込んで、
それで暑いのかもしれなかった。
溶けるなら、それはそれでいいのかもしれない。
せめて影でもできていれば、その方向へ進むこともできた。
それが、生きる道だと。
でも、見渡す限り影はなく、
ただ十字路の真中に僕はいた。
影が真下にあって、
黒くポッカリと穴のようになっていたらいいと思った。
小さな期待を胸に足を上げたが、
別にいつもの道と変わりなかった。
僕は迷っていた。
十字路の真中で。
どの道を通ってここに辿り着いたのかも思い出せない。
先ほどから、
顔のない人がぞろぞろと、
目の前の道をただひたすら歩いていた。
僕は彼らに、どうしてその道を進むのかと尋ねた。
「なぜって、背中を押されているからさ」
僕は目を凝らして彼らの背中を見続けたが、
とうとう彼らを押している<手>は見当たらなかった。
僕は迷っていた。
十字路の真中で。
どの道を通ってここに辿り着いたのかも思い出せない。
右の道には、ゲートがあって一人の受付嬢がいた。
「僕はこの道を進めばいいのでしょうか?」
「はい。只今、こちらのコースはゴールまで最速で辿り着ける
流れる道となっています。お値段も大変お安くなっており、
Aプラン、Bプラン・・・・」
僕は、ポケットを広げてみたがとても足りなかった。
左の道にもゲートがあり、二人の男が番をしていた。
「うちは、右の道よりも・・・」
ライバル同士の対立はすさまじいものだ。
僕は迷っていた。
十字路の真中で。
どの道を通ってここに辿り着いたのかも思い出せない。
振り返るのが嫌だったが、
どうして嫌だったのかも忘れてしまったので振り返ってみると、
一本の長い道があった。
ひどくこの道に進みたくなったが、
この道にはどうしても進めなかった。
(戻れない。)
僕はどこから来て、この場所で迷っているのだろうか。
クレーンか何かで、ポツンとこの場所に置かれたのだろうか。
前も後ろも、
右も左も。
どの道も来た道であるし、
これから行く道でもあるような気がする。
僕は迷っていた。
十字路で生きていた。
僕は生きていた。
十字路で迷っていた。