#1610 農業 | プロパンガス

プロパンガス

いっしょうけんめい働いた人が
せめてビールぐらいは安心して
本物を飲める世の中をつくろう

日本の農業について想うところを備忘的に。

まだ考えている途上なので、間違ってててもあんまり怒らないでほしいんだけど。

僕は二十歳のときに産経新聞に出した(賞をもらってアメリカにまでつれてってもらった)論文で、「日本の農業に未来はない」と書いた。

僕の個人的な意見ではなく、コメ輸入関税化を控えた当時、多くの人が同じように感じていた。

それから20年、基本的には何も変わっていない。

ごく一部の高付加価値作物の栽培に成功している農家の皆さんには頭の下がる想いだが、それは例外中の例外、日本の農村の疲弊度は目を覆うばかりで、自民党を勝たせる力さえなくなってしまった。

今、僕は想う。

「日本の農業」を守ることと、「日本の農作物」を守ることと、「日本の農家」を守ることを、それぞれ別々に考えていかなければいけないのではないか、と。

「日本の農業」が現在抱える最大の問題は、後継者不足だ。

これは、農業に従事している人たちが少しずつ引退していく過程で、農業の法人化を推進していけば解消できる問題。

旧来からの日本農業の弱点である零細化にも同時に対応できる。

政治のやるべきことは、法人の農業参入をスムースにできるように法整備を進めることと、そしてこれがよりだいじなのだが、法人の農業活動の邪魔をしないこと。

「日本の農作物」を守ることも、法人化によってかなり、量的な部分はカバーできる。

自給率を上げたいとかいう寝言を吐いている人にとっては不十分に映るかもしれないが、少なくとも法人化・大規模化で、かなり効率を上げていくことは可能になるはずだ。

質的な部分は、オイシックスのような販路で流通させることができるような高付加価値商品に特化する農家を育成することで、これもカバーできるはずだ。

法人化・大規模化で生産される農産物の何倍もの価格で取引されるような高付加価値産品を作る農家は、やりがいもあれば収入面でも恵まれ、後継者問題に悩まされることも少ないだろう。

「日本の農家」を守ること、これは、敢えて誤解を恐れずに言えば、守る必要がないと考える。

もちろん、高付加価値農産物を生産しているようなやる気も将来性もある農家の邪魔をしないということは非常に大切ななんだけど、それ以外の、後継者にも困るような農家をどんなに守っても日本の農業の未来には結びつかないからだ。

むしろ、生産性の低い農家を過剰に保護することが、農業の法人化・大規模化の障害になる。

なので、「日本の農家」を守ってはいけない。

(もちろん、邪魔したりいじめたりしてはもっといけない)

ただし!

多くの日本の農家が今のような惨状に立たされているのは、農家の皆さん自身が悪いのではない。

彼らは、戦後の日本農政の一番の犠牲者だ。

犠牲者であっても、それが若い人たちであれば「国なんか信用したあなたが悪い」と突き放す手もあるのだが、農家の皆さんの多くがすでに高齢者だ。

これまでずっとがんばって日本の農業を支えてくれた人たちには、やはり国が報いていかないといけない。

日本の農業に尽くしてくれた農家の皆さんがこれからも農業を続ける場合には、たとえば今後15年とか期限を区切って、個別所得保障というカタチで国が彼らの生活を支えていくのがいちばんいいのではないかと考える。

これはバラ撒きではなく、戦後農政の出口政策だ。