稽古場からの最後の日記は、柿沼がお届けする。
 随分先の話だと思っていたが、とうとうこの日がやってきた。
 今日は稽古最終日である。といっても、今日はメイクで費やされた。最初、僕は衣装決め。漸く固まって一安心。その後メイクに入ったが、僕は比較的ナチュラルで、後から来た拝さんが僕の顔を覗き込んで「全然変わらない」といったくらいである。しかし、細かいところがよくできている桜井さんの作品である。その桜井さんも、比較的ナチュラル。しかし、髪を上げたため、印象はかなり違っている。また、拝さん作の「ある仕掛け」もある。団長さんは舞台メイクが初めてということで、綾野さんにしてもらっていた。その綾野さんは、団長さんの傍ら、シャリさんのメイクの手伝いもする。
 比較的早く終わったのは種瀬さんと桜井さん。ワリガヤさんと天谷さんも来ていて、彼等にもメイクは施された。シャリさん、micoさん、原さんはなかなか決まらず、結構長いことああでもない、こうでもないとやっていた。松原さんも手慣れた感じで比較的早く終えられたが、それを拝さんが手直しした。拝さんは原さんのメイクも手伝った。やはり、みんなメイクで結構印象が変わるものだ。
 こうして、どうにかこうにか全員が終わる頃には、撤収と荷物まとめの時間になってしまい、予定していた抜き稽古はなくなった。衣装や道具関係を集め、外に運び出すと、管理人さんは電気を消し、稽古場の扉を閉めた。
 その後、稽古場の前の道で明日以降劇場でのスケジュール等を確認。いくつか問題点が出たが、「後でメールする」となったものもある。ミーティングが終わる頃、トラックが到着。舞監さんの小野さんと美術の栗山さんが降りてきた。その場の人で荷物を積み込む。大して大きな物はないので、程なく終了。
 寒風の中、トラックを見送った僕達は、3ヶ月間通い慣れた池袋の駅に向かって歩いた。途中で綾野さんが「早くゆっくり舞台でも見に行きたいですね」と言った。「もう来週の今日はやってないんだよ」と言うと、「それも寂しいんですよね」と彼女。その気持ちはとてもよく分かる。早く解放されたいという思いと、このままこれがずっと続けばいいという思いと、両方がせめぎ合うのがこの日である。
 何はともあれ、僕達の稽古は全て終わった。明日はいよいよ小屋入り。ラストスパートの向けて、僕達は第4コーナーを曲がろうとしている。