今日は柿沼の担当である。因みに、BBSでははじめと名乗っている。これは、脚本家としての名前に由来していることを、ひと言お断りしておこう。
 今週最後の稽古である。今日は稽古場の片隅に自転車、そして乾燥防止のために、湯を張った大きな洗面器が置かれている。
 いつものように、原さんと桜井さんのシーンの稽古が始まっていた。原さんはだいぶ雰囲気が掴めてきているようだ。衣装の使い方など、徐々に細かい調整に入りつつある。しかし、彼の骨格は結構ごつくて、それが役作りの上で支障を来しているようだ。こればかりはそうそう簡単には変えられないが。
 引き続いて、まだ他の役者が到着していないこともあって、桜井さんと僕のシーンになる。ここは実際にどんな動きをするのか、時間をもらって桜井さんと打ち合わせ。彼の出した案をベースに一度やってみる。しかし、動きが決まらず、何回かやり直しながら整理していった。「なかなかスリリングなシーンになってきている」といいながらも、僕には体の切れの問題を指摘する演出。確かにその通りである。イメージ通りの動きを見せるには、ちょっと苦しい。何かとまともな動きができる体にならなければ。しかし、あと3週間弱でできるのだろうか?方向性は見えつつあるものの、かなり不安が残る。「『あのシーンは何をやっていたんですか?』ってアンケートに書かせたら勝ちだ」と士郎さん。そうなるよう に仕上がっていくのだろうか。
 いつものように徐々に役者が到着し出すと、それに伴ってできるシーンも増えてくる。カーニバルのシーンでは、原さんのダダのこね方が弱いというので、自分の親戚の子供の話を持ち出す士郎さん。この人の演出の特徴の一つとして、こうした具体的かつ身近な例を挙げながら、役者にイメージを与えていくということがある。もしかすると僕も無意識のうちにやっているかも知れないが、これはなかなか有効な手段であると思う。
 最後は駆け足でラスト近くのシーンを通して終わった。それもそのはず、今週日曜(もう明後日だが)には初の通し稽古の予定なのである。役者それぞれは確実に変わってきているが、個々のシーンには課題も多く、「最後の方はまだまだ板に乗せられる状態ではない」と士郎さんは言った。これからその後半部分をどうレベルアップしていくかが課題だ。日曜日の通しは、今現在の僕達の到達状況を確認する、最初の試練になりそうだ。